大人オリジナル小説
- Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.49 )
- 日時: 2012/04/03 21:03
- 名前: 来夏 ◆HpxJ7yQkz.
episode 古川流星U
「てかさー、あんたってホントクズだよね。陰で悪口言ってるって、超最低!」
「ホントホント! コイツ、マジで死ねばいいのに」
「死ねばいいのよ。あんたなんかいらないのよ。目障りよ」
榎本に対する罵倒とか、悪口がさらに増えていく。榎本がどんどん傷ついていきそうで、ヤバイ。
ただ一人――千原は、窓際で立ち尽くしたままだった。俺は思わず千原に駆け寄った。
「……千原、おい、千原」
「古川、ごめん。しばらく保健室に行く」
そのまま、千原は教室を出て行った。その時に見た表情は、とても悲しそうだった。
「……」
「流星……俺等、大和を虐めるのだけは避けてぇ」
俺に近づいてきた一馬が、そう言った。匠も頷く。
「大和は、俺等のダチじゃねーか……なのによ、大和を殴るとか、出来ねぇよ」
――ああ、やっぱり俺と同じ事を思ってたんだな。けど、俺等には出来ない。
四之宮がまた暴走しそうで、怖かった。
そんな事を考えていた時だった。
「……それ楽しいのか?」
「あ? 誰だよ、今言った奴!」
小さな声と、それに反応する桃沢の声。誰だ、今の小さな声。
「……おい、誰だよ今言った奴!」
「ほっとけばいいよ、葵。今はこいつを痛めつけるから」
あの声が、一体誰なのか分からないまま、榎本に対する虐めは続く。
「死ねっての、マジで」
「ホントホント、マジで死んで欲しいわ」
あいつ等はそんな暴言を吐いていた。榎本の表情は暗くなるばかりだった。
「……わたしからしたら、あんた達が死んで欲しいって思うけどね」
「あ!? テメェ、何だよ!」
葵が近くに立っていた椎名の胸倉を掴む。椎名は冷たい目で葵を見る。
「平気で人にそういえる、あんた達の神経もどうかと思う」
「偉そうに言うんじゃねーよ、不登校児の癖にっ!」
そんな怒声が教室中に響く。ただ、四之宮だけは落ち着いていた。
「榎本、あたしはアンタを絶対に追い詰めるから」
「……」
それでも、榎本は黙ったままだった。四之宮は反応の無い榎本を、蹴り始める。
「あたしの事、何も分かってない癖に偉そうに言うその口が、ムカつくのよ」
「……」
榎本はそれでも黙ったままだ。聞いているのか、良く分からない。ただ、これだけは分かった。
髪を切られた事が、榎本をさらに傷つけたんじゃねーかって。
けど、四之宮が言っている言葉の意味が、全く理解出来なかった。
――何を言っているのか、分からなかった。