大人オリジナル小説
- Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.61 )
- 日時: 2012/11/02 11:53
- 名前: 来夏
episode 若林大和
「……そりゃあ、来れねーよな」
「うん。そうだね」
俺達のクラスの下駄箱の前で、俺と杏子はそんな事を呟いた。
俺達の目には、“工藤雛”と適当に書かれたネームプレート。
「……三日間の停学で、四之宮は二日間。何とかしてくれたのか?」
「多分、何かしらおかしい事にも気づいたかもしれないね。あの教室の現状も見て、そうしたんだと思う」
上靴をはきながら、二人で階段を登る。
俺達の会話の話題は、工藤と四之宮の停学についてだった。
俺達が訴えたのが、効果覿面だったかは知らない。けど、信じ切っていたあいつ等は停学にした。藤原が必死に説得していたのもあるらしいけど。
「……でも、これで解決した訳じゃねーよな」
「そうだね−−」
「大和、杏子。おはよー」
教室まで行こうとした時、声を掛けられた。振り向くとそこには、和川麗(わがわ れい)。二年A組の女子で、俺とは幼馴染だ。
制服は完全に着崩していて、ネクタイは「邪魔だから」と付けていない。ベージュのカーディガンがトレードマークだ。
「麗じゃねーか。俺らに話しかけると……」
「別にいいじゃん。てか、停学で良かったね」
薄い茶色の、背中まで長い髪を揺らしながらそう言った。
麗も四之宮と同じクラスで、今のクラスの現状を知っていた。そしてこいつは、四之宮が大嫌いだった。
「……お前は嫌いだったよな」
「大嫌いだよ、あんな奴。まぁあたしのクラスの奴と、同じ感じがするしねー」
不吉な事を言いながら、杏子を見る。杏子より麗の方が身長が高い。
杏子は百五十九センチ、麗は百六十五センチだった気がする。
「あんたは、大丈夫? 一年の時、あたしも不登校だったしさ」
「大丈夫」
「そか。あたしは病気だったし、あんたに起きた事は知らなかったしね」
どっちも、不登校児だった二人。杏子は虐めで、麗は病気。
“不登校”という共通点からか、二人は仲良くなった。麗は、一年前病気だったせいで、杏子に起こった事件だけは知らない。
「わたしは、大丈夫だから。大和や麗達が居るから」
杏子はそう言いながら、教室の方へ歩いて行った。