大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.73 )
日時: 2013/02/17 21:44
名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y



 episode 古川流星


「――千原?」


 屋上から俺だけ出ていく。ある一人が心配だったから。
 保健室へ入る。藤原は居なかった。会議だか何かで居なさそうだ。
 俺は多分いる千原に声をかけた。
 だが、千原が返した声はとても震えていた。


「……ふ、る、……か、わ……ど、どうしよ、ねぇ、どうしよ」


 また怯えてる――てか、どう考えても尋常じゃねぇくらい怯えてる。


「千原―――!?」


 ベッドを仕切っているカーテンを開けた瞬間、俺は引っ張られた。
 そして何かが俺の身体にくっついてきた。
 自然とベッドの上に座っているみたいな、そんな感じだった。


「……千、原?」
「古川、古川……。あたし、どうすればいいの?」


 何かが――それは、千原だった。
 てかいてぇ。つかバレたらやべぇ。
 俺は冷静にカーテンを閉めて、千原を見る。


 こっちを見上げる千原は、涙目だった。
 つか、何で泣いてて俺に抱き着いてるんだよ。


「……おい、何があった」
「真奈美に……言われた。紘歌を、シカトしよーって」


 おい、そこまで話が進んでたのかよ。
 そんで千原が泣く理由はなんだ?


「……じゃあ、お前何で泣いてるんだよ」


 そっと両腕で抱きしめながら、俺は聞いた。その身体が震えてたし、こいつはこうしないと落ち着かなかった気がする。


「……だってさ、アタシ達だっていじめてたじゃん。なのに、シカトって……そんなの、逃げてるだけじゃん……」


 そう言いながら、千原は俺の腰に腕を回した。そして独り言のように呟く。


「紘歌にすべてを押し付けるって、どうなの……? アタシ達だって、悪いじゃん」
「どうすればいいの? アタシは。ねぇ、どうすればいいの?」


 んなの、俺にもわかんねぇよ。
 でも、俺は大和に味方をする。こんな形で駄目なんだろうけど。


「俺は、大和に味方するからよ。千原は、千原で決めろ」
「……若林、の?」


 俺から離れて、見上げる千原。
 いまだに零れ落ちていく涙をぬぐいながら、俺は言った。


「やっぱり、話してぇんだ」