大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.75 )
日時: 2013/04/28 20:49
名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y



 episode 音原霞



「お母さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「うん。今日は、早めに帰るから」


 そう言って、私は家を出た。
 そういえば、今日は四之宮が復活する日だった。


 クラスがみんな怯えていた筈だが、そんな事はどうだって良かった。

 私には、関係が無い。だから、私にとってはまた日常が戻ってきただけだ。


 けど、その日常は崩れ落ちた。


 ***


「……?」


 いつも通りの時間に来たけれど、おかしい。
 何かが、おかしい。教室の雰囲気が―――


 そう思った瞬間だった。


「ふざけてるの!!?」


 誰かが激昂して、走る音。そして次に聞こえたのは、鈍い音と悲鳴。

 
「……え?」


 ドアを開けた瞬間だった。何かが飛んできて、私の顔にぶつかったのは。そして鈍い痛みを感じたのは。
 一瞬で起こった出来事だった。


「ふざけんじゃないわよ! あんた達だって加害者なんだからね…!!」
「いったっ! 離してよ、うぜぇんだよ!!」


 見えたのは、四之宮とその仲間の喧嘩だった。
 周りの連中は、怯えていたが物の投げ合いもしていたのでそれを避けて悲鳴をあげていた。


「……」
「音原? どうした……って血出てるぞ」


 顔をあげると、目の前に矢上の顔があった。心配そうに私を見ながら、タオルで私の右頬を抑えていた。


「……なん、で」
「切れてんな……って何やってんだあいつ等!」
「……来たら、こっちに物が飛んできた。それで、喧嘩してる」


 どうしてこいつに、私は話してるの?
 どうして、こいつは私の右頬の傷を抑えてるの?


「……あ、だから怪我してたのか。大丈夫か」
「……う、ん」
「うん。なら良かった。ちょっと避難だな」


 そう言っている間にも、怒声は聞こえた。