大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.76 )
日時: 2014/02/17 17:54
名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y

 episode 矢上恭平


 龍太郎より先に終わったので、俺は一人で教室に向かっていた。
 でも、何か様子がおかしかった。


「――音原……?」


 
 視界に入ったのは、教室のドアの前で座り込む音原。音原の周りには、教科書。でも、音原の右頬からは血が出ていた。
 音原は普段見せる事のない、驚く表情を浮かべながら、教室を見ていた。


 俺は音原に近寄って、音原に話しかけた。


「音原? どうした……って血出てるぞ」


 俺の声に気づき、俺を見上げる音原。
 いつも通りではない、その表情。
 無表情じゃなくて、驚いていた。

「……なん、で」


 まだ使っていなかった青いタオルで、音原の右頬を抑えながら呟く。だが教室を見て、俺は唖然とした。


「切れてんな……って何やってんだあいつ等!」


 色々な物の投げ合い。四之宮達が喧嘩をしていた。他のクラスメイトは悲鳴をあげている。


「……来たら、こっちに物が飛んできた。それで、喧嘩してる」
「……あ、だから怪我してたのか。大丈夫か」


 音原が怪我をした理由を、説明してくれた。俺は音原に聞いてみる。


「……う、ん」
「うん。なら良かった。ちょっと避難だな」


 その間にも怒声が聞こえるし、こっちにまた教科書が飛んできた。

「!」
「危なっ…」

 音原を庇うと、背中に鈍い痛みが走る。
 どうやら音原は大丈夫の様だ。

「……何で、庇うの?」
「いや、怪我してほしくないから……ってまたか!」


 何かが当たって、背中に鈍い痛みを感じた。地味に痛い。


「き、恭平!」
「尚人!」


 教室から出てきたのは、尚人。尚人はドアを閉めて座り込んだ。


「やべぇよ! 四之宮がキレて、桃沢達もキレて喧嘩してる! 野村達がどうにか止めようとしてくれてるんだけど……」
「……」


 尚人はどうやら怪我をしていないみたいだ。良かったけど……。


「何でああなったんだ!」
「桃沢達が、何か裏切ったとかで……四之宮がぶちギレて……! 先生達よばないと、やべぇよ!」

 
 そう叫んだ時だった。
 突然ドアが開いたのは。


「いたた……」
「ちっ、担任呼んでくるから待ってろ光」


 出てきたのは、濱田と多川。
 濱田は調子が悪そうだったが、多川はかなりイライラしている様に見える。


「目黒……光を頼む」
「お、おう! 女子は?」
「ほとんどが怯えて動けてない」


 そう言いながら、多川は走っていく。


「多川! 全員呼んでくれ!」
「分かってる!」


 俺らはまず、保健室へ行かなきゃいけない。
 俺は音原を立たせると、音原の右腕を左手で掴んで走った。