大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.80 )
日時: 2013/07/05 19:04
名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y


 episode 近藤理穂


「ひっ……!」


 机の下に隠れながら、耳を塞ぐ。それでも聞こえる罵声。
 私は、泣いていた。怖すぎて、泣いていた。


 その理由は、四之宮さん達の喧嘩だった。
 野村君達が必死に止めようとしてくれてるけど、それでも止まらない。


「あんた達だって、加害者なのよ! あたしだけが悪い訳じゃないわよ!!」


 確かにその通りだけど、こんな事して許されるとは思わない。
 逃げたくても、逃げれない。どうすればいいの? 
 泣いていると、声が聞こえた。


「近藤、大丈夫だから! 尚人達が先生達呼んできてくれたし、大丈夫!」
「今野……君……」


 そういう今野君も、声は震えていた。そして今野君は頭を撫でてくれた。
 撫でられても逆に涙が溢れて、私はさらに泣く。怖い、この状況があまりにも怖い。
 今でも怒声が響き渡っている。

「いってぇんだよ! 偉そうに、上から目線でうざいんだよ!」
「はぁ!!? 何よそれ! あんたも人の事言えないじゃない!」


 桃沢さんはいつの間にか落ち着いていて、ただ立っていた。
 本田君と野村君は、四之宮さんと日村さんを羽交い絞めにしながら止めていて。けれど、それでも二人の怒声は響く。

「あんたがいじめさえしなきゃ、こんな事にならなかったのに!」
「うるさいわよ! あんただって楽しんでたくせに、人の事言えるの!!?」
「はぁ!!? お前のせいだろ!」


 そして―――殴り合いが起きた。野村君と本田君は鼻に肘打ちをされて、うずくまっていた。先生達の声も聞こえるが、二人は止まらなかった。
 痛い音が聞こえるが、みんなは怯えるばかりだった。

 
 今野君はその間にも、ずっと頭を撫でてくれた。顔色は悪かったけど、ずっと撫でてくれていた。


「もう……やめてよ……お願い、やめてよ……」


 私は両耳を両手でふさぎながら、そう呟いた。
 声にならない、声で。