大人オリジナル小説

Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.82 )
日時: 2013/07/24 18:01
名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y

 episode 榎本琳華


「…ちは、らさん……」
「榎本、ごめん。ホントごめん。アタシ、やっぱり止めれば……ごめん」


 千原さんはわたしにそう言った。そして、ドアに固まりながら何かを話している先生達に向かって、こう言った。
 廊下にあった誰かのロッカーから、教科書を取り出しながら。


「先生。アタシは、榎本をいじめてました。……紘歌達と、一緒に。雛も、大和も、椎名も…三人の事も、いじめてました。だから……」


 そう言いながら、教科書を投げた。ドアのガラスに、投げつけた。力いっぱい投げつけながら。
 それも必死な顔だった。歯を食いしばりながら。
 先生達は慌てて止めようとするが、千原さんは叫ぶ。


「こうでもしなきゃ! 止められないじゃないですか! 先生達は、アタシ達を助けないんですか!」


 そう言っていた。
 そんな時、椎名さんが口を開いた。一瞬にして空気は凍った。音も立てずに、寒さがなぜかした。


「……わたしのときだって、そうだったから仕方ないよ。証拠をそろえても、先生達は信じなかった。でも今回、こんな事が起きてるんだから信じますよね、流石に。わたしは、信じなかった先生達が大嫌いですよ。今でも」


 そう言った椎名さんは、誰かのロッカーから国語辞典を取り出して、ドアに向かって投げた。
 わたしはそれを見て、右肩にかけていたカバンから、ある物を取り出した。


「……ごめんねおにいちゃん。今日、キャッチボールしようっていってくれたのに」


 そう言いながら、野球ボールを投げつけた。そしてそのガラスは壊れた。
 二人が投げた、辞典と教科書でヒビが入ったからだ。


 ***


「榎本、千原、椎名! 君たち後で―――」
「今はそう言っている場合じゃないです! 怪我している子達だっているんですよ! 先生達、いい加減にしてください!」


 わたしはそう叫びながら、教室へ入る。千原さんと椎名さんも教室へはいる。そのあとを藤原先生が入って行った。
 他の先生達も慌てて入る。古川君達は立ち止まったままだったが、入ってきた。
 そしてわたし達に気づいたのは―――


「南……」


 千原さんの下の名前を呼びながら、桃沢さんが駆け寄ってきた。
 良く見ると、桃沢さんの右頬は腫れていた。
 わたし達が入ってきても、四之宮さん達は喧嘩をしていた。
 殴り合いで、血が飛んでいたりと―――



 あまりにも、嫌な光景だった。



「やめろ! 四之宮! 日村!」


 先生達がようやく止めに入った。
 野村君達が古川君達に連れられて、こちらに向かってきた。
 遅すぎて―――助ける事が遅かった。