大人オリジナル小説
- Re: 暗闇の世界で、翼は溶けていった。 ※少し修正中。 ( No.90 )
- 日時: 2013/08/05 19:36
- 名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y
episode 古川流星
「まさか私一人で、二人の担当とはね……。でも、聞きたかったの」
「聞きたかったのかよ……」
俺は呆れながら、頭を抱えた。
俺の隣には、何故か椎名が居る。
椎名はずっと真顔で藤原の方を見ているだけだ。
「……わたしは、藤原先生がまだ良いです。他の先生には、恨み言しか喋りません。証拠をそろえても信じようとしなかった人に、何を言ったって、無駄ですから」
早口だけど、言いたい事は分かる。
けど殺気を感じて、さっきから鳥肌がやばいんだけど。
「そう……。あの時、私は居なかったからね……聞こうとしたら、椎名さんはもう学校へは来ていなかったしね」
「……わたし達、どうなりますか?」
椎名は藤原の質問をシカトして、そう返してた。
殺気と声が冷たすぎて、怖い。
「椎名さんはともかく、古川君は停学になるかもしれないわね」
「……やっぱりかよ。別にいいけど。こいつにも、榎本にも俺は……大和すら傷つけてしまったんだからな」
俺は、大和を一度裏切った。
それでもあいつは許してくれたけど、若干何かが残ってる。
心のどっかに、残っている。
「まだ反省もしているから、良いけどね。世の中には反省しないで、あなたたちより酷いいじめをしても、少年院から出れる人がいるからね」
「そんな事あるのかよ」
そう俺が返すと、藤原は話す。
「そうよ、少年法があるから名前も公表されない。どんなに酷い事をしても、少年だから、少女だから……で名前が公表されない。
反省をしていなくても、出れるからね」
ひどい話だとは思ったけど、どうにもならない。
これが、現実?って事じゃねーよな。
「……椎名さん、あなたはどうしたい? 古川君はまだ反省しているからともかく」
「……わたしは、先生達に謝って欲しいです。藤原先生はともかく、当時の担任にも謝って欲しいです」
藤原が聞くと、椎名は淡々と答える。
そして少しだけ黙る。空気が止まった気がするけど、椎名はそれを普通に壊した。
「四之宮に、もっと謝って欲しい。人生をあいつに奪われたし、あいつがいじめられたら、自業自得だと思います」
―――椎名は、マジで恨んでるんだな。
隣に居るだけで寒気がめちゃくちゃする。
「分かった。伝えておくね。先生達はこれで分かったでしょうね。もちろん、真辺先生も」
藤原は窓を見ながらつぶやく様に言った。
「私も、助ける事が出来なかったら加害者なんだけどね。でも、やっと現実は見れた筈よ」
―――俺が、止めていれば良かったのか。
俺は舌打ちをしながら、ふとある奴を思い出した。
―――あいつ、今日大丈夫じゃねーよな。
大丈夫だったらいいけどさ。
湿布を張っていた、戸川の事だった。