「なんだお前らなんか楽しそうな話してたなー」
でももう下校時間じゃないのか?なんて笑いかける先生は目が笑ってなかった。
「え・・あの、先生・・?」
「今の話・・」
「おん。ばっちり聞いてた」
そして一瞬呼吸が止まる。
「俺の話なんかしよってー俺も人気やな」
なんて冗談が言えるのは今は一人しかいない。
「先生部活はいいんですか?」
伊藤の声がかすかに震えていた。
なんでだろう、悪口を言っていたわけじゃないのにすごい――・・
「・・(威圧感が・・)」
「俺はいいんだよー。だって俺の担当漫研だし?めったに顔ださんでいーもん」
そう言って無邪気に笑った。
「何してるん?」
「先生には関係ないですよ」
「お。それまたなんで」
「非常勤だから」
われながら強気で言ったと思う。
「市川お前意外に生意気な口きくなー。それに伊藤と仲良しだなんてびっくりだわ。ぜんぜん接点なさそうなのにな」
「あぁ、俺ら友達なんで」
「・・・・・とにかくまぁ、出て行ってくれませんか?」
少し語気を強めた。
「またそうやってー寂しいじゃんかー」
「先生やることないなら早く帰ればいいじゃないですか」
「そーゆーわけにはいかないだよねぇ。お前らはなにやってんの?てか付き合ってんの?」
「んなわけないでしょう」
「あれか?いちゃいちゃしたいか?俺邪魔かー」
「言って良いことと悪いことがありますよ先生」
何なんだこの先生。
「俺ら今会議中なんで。これも立派な部活だということにしときませんか」
「帰宅部か。帰宅部ならどっちかの家でしろよ」
「えっと・・あ、俺ら『居残り隊』なんで!!」
これには吹き出してしまった。
「ちょっと伊藤何その居残り隊って!!」
「居場所が欲しいんす」
「・・・居場所?」
「まぁようは落ち着ける場所ってことですかね。で、たまたま行き着いた二人です俺らは」
伊藤は軽く笑いながら言った。
「居残り部ってことで・・・・・まぁ生徒会に部活申請出してないからこの部活は認められてないと思いますけど」
「・・ふーん」
そして先生は近くに山済みされていた漫画をちらりと見てから。
「じゃぁ俺が顧問になったろか」
こんなことを言い出した。