大人オリジナル小説
- Re: Re:愛してる ( No.115 )
- 日時: 2013/02/22 22:47
- 名前: おかゆ
ヒーローになりたかったんだ。
誰にも負けなくて皆があこがれる、最高のヒーローに。
そして隣にお前がいてくれたら、
――・・最高だっただろうな。
* * * * *
『まもなく電車が来ます。白線の内側に――』
「(えーっと…この電車に乗って…)」
八月某日。世間で言うお盆の時期に俺はとある駅のホームにいた。
愁の墓参り。
今まで行かなかった。今日、初めて行くことになる。
市川に話したら「そう、」と言われて少し笑った気がした。
蝉の声がやけにうるさく聞こえてやけに緊張する。
俺はもう、逃げたくないんだ。
* * * * *
『――桃太郎?』
『そう、桃太郎。保育園の劇で俺犬役だったんだ』
『犬って・・でも、何で急に?』
『まぁ一般的に知られている桃太郎はさ、仲間集めて鬼退治して財宝持ってきて村の皆に感謝されるって言うやつじゃん?』
『・・・・・まぁそうだけど』
『あれには続きがあるんだよ』
『続き?』
『そ。続き・・桃太郎に退治されてしまった鬼は桃太郎に復讐するために自分の娘を桃太郎のところに送り込んだんだ。桃太郎を代わりに殺して来いってね』
『なんで娘なんだ?』
『さぁ?親だと顔が知られてるからとかじゃない?・・それで、鬼の娘は最初は桃太郎を殺そうとがんばるんだけど桃太郎と接しているうちに娘は恋に落ちたんだよ』
『恋って・・・まさか桃太郎にか?』
『ご名答。そして殺せなくなっちゃった鬼の娘は父親に申し訳なくなり、かといって桃太郎を殺すわけにもいかず、結局自らの命を絶った』
『・・・・・・・、』
『それを知った桃太郎は涙を流し、もう鬼退治には行かないと誓ったんだって』
『へぇー』
『俺らが知ってる話しはキラキラしたヒーローみたいな話しなのに、その続きは誰も知らないしもちろん娘のそんな気持ちも知らずに思いはいつも一方通行で――』
『あーわかったわかった・・お前自分の世界には入ってるぞ』
『えっ!?・・・あぁっ・・ごめん・・今部活で絵本を感情をこめて読もうってのにはまっててさ、ちょっと桃太郎を調べたいろいろ出てきて・・翔に教えよっかなって』
『おまえさぁ、最近思ってたけど女々しいとこあるよな』
『えー?なんで?』
『なんかやってることが全て?演劇とか』
『お前っ・・何言ってんの!?』
『だっ、』
『伝えたいことを相手に伝えたくても相手には全部伝わらない時だってる――・・だから俺は演劇で自分の思ってることを伝えたいんだよ!!』
『何言ってんのかわかんねぇキモ』
『きっ!!?キモいって!?翔も思ったことない!?伝えたくても伝えられないこととか!!俺はなぁっ!!そんな伝えたいことをどうやって伝えたいかを――』
『あー!!はいはい!!わかった俺が悪かった!!!!』
『話を聞けよー!!!』
* * * * * *
いつの間にか目を閉じていた。閉じていただけで眠ってはない。
墓参りとはいえ愁に会うからか、愁との思い出ばかりが思い浮かぶ。