先生のよくわからない話しが終わって数分後。
「あー疲れた・・悪ぃ遅れた」
伊藤がやってきた。
「・・・別に待ってないし」
「まぁそう言うなって」
伊藤は軽く笑いながら近くにあった椅子に腰掛けた。
「今日で俺が分担してた仕事が終わったんだ」
「ふぅん、」
「でもまだまだ仕事が残ってるからな・・いろいろ手伝わないと」
「へぇ・・」
独り言なのか、私に向かっていったのか、どちらかは解らなかったけど。
「・・・・なぁ、」
「何よ」
なんだか。
「おい」
「だから何」
ヤバイ。
「市川」
「何って――」
あ。
顔と顔。距離、数十センチ。
「お前、怒ってる?」
警告、警告
「・・・・お、こって・・ないけど」
少し噛んでしまって、だらしない。
「何で目を合わせてくんないの?」
「は?」
そういえば。そんなこともあったなぁ。
なんて冷静に頭の隅で考えた。
でも、待ってよ。
まるで私が先生に言われて伊藤のこと意識してるみたいじゃない・・!!
「・・・・・・・・・ぅあ・・」
軽く息を漏らすと伊藤の顔が一瞬だけ青ざめたように見えた。
そして勢いよく離れるとすぐに彼の顔が赤くなって――・・
「・・・・・悪い」
「あっ・・ううん、ごめん・・」
そしてしばらく無言。・・ううん、本当は一分も経ってない。
「あぁそうだ、明日までにやらなきゃいけないものがあった」
なんて空気を換えてかばんから文化祭の準備と思われるものを取り出した。
「手伝おうか?」
「おぉ、頼む」
顔が熱い。
不自然なくらい静かだ。
『文化祭マジック』
「――・・っ!!」
先生の言葉を思い出してまた顔が熱くなる。
もう、これじゃぁまるで本当に、
「(伊藤のことが好きみたいじゃないか・・)」
でも、一度考え出した思いはとまらなくて。
それがぐるぐると回って。
(あぁもう)
私は伊藤が好きなんだ――・・
気付かない振りして、でも本当は心のどこかでもう気付いてたのかもしれない。
気付いてしまったらもう。
止まらなくなる―――・・・。