大人オリジナル小説

Re: Re:愛してる ( No.151 )
日時: 2013/10/19 19:36
名前: おかゆ



わかっている。そんなことくらい。
所詮伊藤が最初面白半分で仲良くなったってことくらい。

でも今は?

――『俺と友達になろう!』
あの言葉に嘘偽りはなかったはずだ。




寒い。冷たい。コートを着ているのに。室内なのに。それでも震えている。

まだ首に違和感も残っている。

別に、なんともない。なんともないんだ。この寒さも。この痛みも。

でもわけがわからず涙が出るんだ。


「・・・・・ひっどい顔」

なんて言って自分で笑ってみせる。


理紗とは間違いなく親友であって。それは決して偽りとか、偽善とか、そういうんじゃなくて、


じゃぁ伊藤は――・・


「・・・・・っ、」

ダメだ、どんどんマイナスな方向に考えていってしまう。しっかりしろ。
伊藤はいい奴で、私と友達になってくれた人で、それで――・・。



「――私は伊藤にいったい、何を求めているんだ・・・・?」


もう自分が何を考えているのか、何を求めているのか、何をしたいのかわからない。


「・・・・・帰ろ」


これ以上あの空間にいたらダメだ。
ゆっくり休まなくちゃ。
そしてできれば、伊藤や麗華がいない場所で。


皆になんて言おう。
いや、みんな、なんて。別に自分がいなくても。今だって。


「あーあ、」

半分以上乾ききった涙の後を鏡で見てから袖口で拭く。
わかっていたことなのだけれど。

(自分で言ってて悲しくなるなぁ)

でも大丈夫。

まだ、大丈夫だ。


私はまだ、崩れないよ。



*    *    *


私が戻ってみると一瞬だけ、シンとした。本当に一瞬。誰も気に留めないくらいの間。ほぼ皆が無意識のうちに作り出した空間。


「えっと・・・・もうそろそろカラオケ終了時間だしまだ解散には早いからってことで・・これから二次会なんだけど瑠璃ちゃん来る?」

遠慮がちに飛鳥が言う。



「・・・・・・ごめん、急用が出来ちゃった。皆で楽しんできて」



これが正解。これでいい。これがいい。


「そっか。じゃぁ来るメンバーは・・」


そう言って来る人数を数える。よかった。抜けるのは私だけじゃないらしい。


「じゃぁね」

飛鳥が軽く手を振る。私も小さく手を振った。

他の子たちに混じって帰るとき、麗華とすれ違う。




「         」



何か聞こえた。気のせいにしておこう。



伊藤と目が合った。何かを射るような目。
多分これはある程度分かってるんだろうな。


そう思うとなんだか無性に泣けて。



『あんまりトラブルは起こすなよ』




「―――――っ、」




誰もいなくなったところでベンチに座り、背中を丸める。







(ごめん、伊藤)