大人オリジナル小説

Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.15 )
日時: 2012/04/08 11:04
名前: 香月

No.9 「本当の善。」



 「…帰ります」

 急にベンチから立ち上がる私。

 さぁっと、冷たい風が吹く。


 「ああ、うん。また、会えるといいね」
 「そうですね」


 そうですね。


 その言葉が、暗い夜空にむなしく消えた。


 「さよなら」


 さよなら、偽善者さん。

 私はきっといつか、あなたのことを思い出すよ。

 だってあなたは、偽善者だったから。

 あなたはきっといつか、私のことを思い出すよ。

 だってあなたは、偽善者だろうから。


 あなたはこの後、こう言うんだろう。


 「俺はあの子を救えたかな」

 残念、救えてないよ。

 私はまだ、死に魅力を感じてる。


 「俺の声は、あの子に届いたかな」

 ごめんね、届いてないよ。

 私はまだ、死からの声が聞こえてる。


 「俺は、善になれたかな」



 善?


 冗談でしょう?


 あなたは装っているだけ。うわべを飾っているだけ。

 あなたの『善』は、見せかけだよ。


 なんで分かるのかって?

 それはね、私が『悪』だから。

 あなたの精一杯の誠意をつぶして、ひどいことを考えて。

 私が一番、誰よりも、醜い。


 だから。

 だから嫌い。

 『善』を名乗って『善』を語る、『悪』が。

 自分の醜態を隠す人間が、嫌いなの。


 何よりも嫌いなのは、自分だけど。




 ねえ、本当の善になりたいの?

 それなら、私を消して?

 そうしたら、善になれるよ。


 あなたの人生、壊れちゃうかも、しれないけれど。