大人オリジナル小説

Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.18 )
日時: 2012/05/03 16:41
名前: 香月

No.12 「ひどいよ。」




 「もしもし?…あら、あなた?」


 その言葉に、わたしの胸が高鳴る。

 お父さんだ。出張先から、電話をかけてくれているんだ。


 「ええ、大丈夫よ。みんな元気。…ええ、今かわるわ。…秋人?お父さんよ」


 『お母さん』が『弟』に受話器をわたす。

 次は私だ。何を話そうかな?

 なるべくお父さんが喜ぶようなことを話そう。


 私がいい子でいれば、もしかしたらお父さんはまた、私を見てくれるかも、しれない。


 「…うん、分かった。…ハイ、母さん」


 『弟』が話し終わったみたいだ。


 「もしもし?そう、私」


 私は受話器を見つめる。『お母さん』の声が、右耳から入って、左耳から出て行く。

 ……早くかわってよ…。

 イライラし始めたとき。


 「…ごめんなさいね、今海湖いないのよ」

 急に『お母さん』の声が、鋭く冷たく、私に突き刺さった。


 「…え…」



 何、言ってるの?



 「そう、まだ部活みたいで」



 私、ここにいるでしょ?



 「…ええ、伝えておくわ。それじゃ、体に気をつけて」

 「…待っ…やめて、切らないでよ!」



 叫んだけど、遅かった。


 ガチャン。


 受話器を置く音が、重く響く。


 「…残念ね。点数が悪かった罰よ」


 『お母さん』が笑ってる。


 「ハハッ、あわれ〜」


 『弟』も、笑ってる。



 ……なんで?

 なんで、笑ってるの?

 なんで、切ったの?

 なんで、私の幸せを奪うの?


 どうしてよ……。どうして『弟』だけなの。


 ひどいよひどいよひどいよ。


 あなたたちは、私の全てを壊すんですね。


 私の人生も、お父さんとの関係も、私自身も、全て全て。


 ……もう、いっそのこと、壊れてしまいたい。


 永遠と直せないように。



 もう二度と、壊されないように。





 壊す方法、教えてあげようか?

 わあ、本当?

 本当さ。なに、カンタンだよ。
 そうだなー…十階もあれば充分かな。
 そこの屋上から、下へ飛び込んでごらん?

 …どうなるの?

 それは、やってみないと分からないさ。



 どうだい、試してみないかい?