大人オリジナル小説
- Re: 私って、生きてる意味、あるのかな。 ( No.2 )
- 日時: 2012/03/18 07:35
- 名前: 香月
No.2 「行かないで。」
なんで私は、こんなに不幸になってしまったのか。
強いて言えば、本当のお母さんが死んでしまったからだ。
……違うか。正確には、お母さんをひいた奴が、居眠りしていたから。
「海湖、新しいお母さんだ」
本当のお母さんが亡くなって五年、お父さんは一人の女の人を連れてきた。すごく優しそうな人で、実際優しかったのを覚えてる。
お父さんと結婚する前までは。
なぁんだ、結局お父さんと結婚したかっただけか。そっか。
私を愛してくれるんじゃ、なかったのか。
じゃあ、いいや。私のお母さんは、一人で充分。ね、そうでしょ、『お母さん』?
だって、愛してくれないんでしょ?
「秋人とは、仲良くやってるか?」
いつだったか、お父さんが訊いてきた。
秋人?誰それ?ああ、『弟』ね。
仲、いい訳ないよ。
そんなことより、お父さん。私この前、作文の金賞を取ったんだよ?
ねえ、見て。こっち見て。
『弟』の話なんて、しないでよ。私だけを、気にかけてよ。
実の娘なんだよ?
あの人たちは、何のつながりもない、赤の他人なんだよ?
あの二人、本当は性格悪いの。えげつないの。
私、いじめられてるの。
…言えたら、どんなにいいだろう。
「…うん、仲良くやってるよ」
「そうか。よかったな」
「うん」
お父さんの笑顔。
私が嘘をつく理由は、これ。
お父さん、世界で一人だけの、私の味方。
だから私、我慢するね。
お父さんが笑ってれば、それでいいよ。
でも、おねがい。
これ以上、そっちへ行かないで。
ここにいてよ。
私を、一人にしないで。
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