大人オリジナル小説
- Re: ヤクブツGirl* ( No.5 )
- 日時: 2012/08/04 18:03
- 名前: 菜々希 奈菜 ◆mkSlAKVcCY
#4
「あ。」
私が小さい声を上げたときだった。
悲鳴ではなく、「あ」と言った瞬間。
まるで手が滑った後からスローモーションのような感じだった。
何もつかんでいない手がぼやける。青い瞳が透き通る。
音も聞こえず、ただ青い空とつかまない手が見える。
「イツ!!」
すると、とても近くだがすごく遠くに響く声が私の耳を貫通した。
私の名前を呼ぶ声が。聞いたことがある声。
そのとたん、ガシャァ!と大きな音が鳴りフェンスがゆれ、
私の手首を誰かが強くつかんだ。冷たい手。
ガクンと私の体が止まった。
上を見上げると薄茶色の大きな瞳をした人がいた。
いつもいつも学校では一緒にここでサボっている。
「知衣!!」
友達の大場 知衣がニヤッと笑って私の手をがっちりとつかんでいた。
思いっきり体を前に出して。もうひとつの手でフェンスをつかんでいた。
「ばーか。お前何してんだよ。」
知衣はそういってグイっと力強く私を持ちあげてくれた。
おかげで私は助かった。屋上の中ではぁはぁと息切れをしてうつむいた
「ありがと。知衣。助かった」
「ああ。」
知衣は冷たい声で返してきた。
「お前がいなきゃ、サボるの一人だし、クスリも買えないしな」
ああ。なるほどな。
知衣は私から薬を買ってやっている。
でも、いくら友達だからといって値引きしたりはしない。
『これは商売だからな。』一登がそういっていたから。
「今日も薬買うの?」
「ああ。一袋頼む。持ってんだろ?」
「くく。やっぱり、知衣にはばれてたか。」
「ひひ。ああ。今日は値引きしてくれるか???」
わざとらし。
「しょーがねーな。じゃ、2万引きってことで。」
知衣はガッツポーズをした。
「やった。」
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