大人オリジナル小説

Re: 昨日の毎日、明日の…… ( No.1 )
日時: 2012/10/07 18:14
名前: ルゥ

《第一》銀ぎつねの森




『お兄ちゃん!お兄ちゃん!今日はサワガニ取りにいこうよ!』

『ダメダメ!サワガニは昨日行ったでしょ!今日は野ネズミ取りにいこうよ!ねっ!お兄ちゃん!』

二人の妹達。
いっつも元気で、明るくて、僕の大切な家族。
僕の大切な妹達。
昨日は元気だったのに。
昨日はあの後、結局二人がサワガニと野ネズミのどっちがいいかで喧嘩になって、母さんに怒られたな。
母さん、怒ると怖いから、妹達は二人して泣いてたっけ。

『いいか?お前は、いざという時は妹達と母さんを守らなやきゃなんだぞ。お前は男なんだから、家族を守らなきゃなんだ。』

四人の兄さん達は、僕に毎日そんなことを言ってたっけ。
森にも、森の外にも怖いものはたくさんいて、世界はすっごく広くて、恐くて、でもだからこそすっごく綺麗なんだ、って教えてくれた。

『ほらーお前達!どうだ、凄いだろう!ヤマバトだぞ。今日は大物が狩れたぞ。父さんは凄いだろう!』

日が暮れる頃になって帰ってきた父さんは、大きなヤマバトを四羽も口にくわえてた。
父さんは狩りが凄く上手で、父さんに教えてもらう狩りの練習はとっても楽しかった。

『狩りを成功させてくれた山の神様と、このヤマバト達に感謝をしよう。俺達は、生きている物を食べて生きているんだ。そのことを忘れちゃ駄目だぞ。今日食べるヤマバト達の分も、昨日食べた野うさぎ達の分も、しっかりと生きていかなきゃなんだ。わかったか?』

いつもいつも、父さんはご飯を食べる前に必ずそう言ってた。
いつもいつも、僕達は僕達に食べられてくれる動物達に感謝をした。

父さんは、強くて、優しくて、かっこ良くて、僕の最高の父さんだった。
母さんは、怒るとちょっと怖いけど、いつもはすごく優しくて、笑っていて、僕の大好きな母さんだった。
二人の妹達は、いつもわがままで、うるさくて、すぐに泣いて、狩りがヘタクソで、でも明るくて、元気な、僕の大切な妹達だった。
四人の兄さん達は、強くて、賢くて、凛々しくて、少し厳しいけど、僕の誇りの兄さん達だった。
明日も、明後日も、一週間後も、一ヶ月後も、一年後もずっとずっとこんな暮らしが続くと思ってた。
続くはずだった。

でも…今は……










いない。
姿も見えない。
声も聞こえない。
匂いもわからない。

僕はー。




































独りになった。