大人オリジナル小説
- Re: 昨日の毎日、明日の…… ( No.76 )
- 日時: 2013/03/18 17:24
- 名前: ルゥ
〈間章〉
『川を上る鮭の話』
秋だ!秋だ!秋が来た!
上ろう!上ろう!我らが生まれた場所に帰ろう。
塩っ辛い海を出て、川に卵を産みに行こう!
海の中を川に向けて泳いで行く。
途中にあるのは危険ばかり。
サメだ、サメだ、サメが来た。
逃げなきゃ食べられるぞ。逃げろ、逃げろ。
あっ!イワシの群だ、ご馳走だ。
追いかけろ、追いかけろ、追いかけて、追い詰めて……。
さあ、ご馳走だ!皆で食べよう。
朝が来て、昼が来て、夜が来て、また朝が来て、昼が来て…………。
もう何日経ったかな?
仲間はずいぶん減っている。
海の他の生き物たちに食べられた者、海中にあった網に捕まった者、途中で力尽きた者、群れとはぐれた者……。
生き残った皆は泳いで、泳いで。
見えた!川の入り口だ!
さあ皆!この川を山の奥の奥まで進もう!
山を流れる川はとても速い。
流れの速い川の水が体を押してうまく進めない…。
でも!我らは遂に、我らの生まれた川に帰って来たのだ!
身体中が歓喜に騒ぐ。
思わず飛び上がる。
身体中に感じる水が気持ち良い。
体を押し返す急流も、ゴツゴツとした川底の石も、すべてが輝いている!
あ!小さな滝がある!
水が真上に、空に向かって登ってる!
あの滝を越えれば、我らの生まれた場所がある!
滝を飛び越えた向こう側に、我らの卵が産める場所がある!
さあ、飛び越えろ!水を弾いて川の上を飛ぶ。
そこに見えたのは、大きな鋭い牙と、茶色の毛と、赤い舌。
ああ、知っている。これはーーー
熊の口だ。
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