大人オリジナル小説

Re: その人の花は枯れていく。 ( No.9 )
日時: 2013/02/16 12:08
名前: 名無し


 episode 外田希


 授業中にあいつ等は、何かゴミを投げる事がある。
 今日のターゲットに対して投げて、命中したら笑ってる。
 今はやっていないけど、ガキっぽい。


 ただのバカだと思った。
 それを見るあたしは、オレンジ色のシャーペンを回しながら先生の話を聞く。
 隣の四橋は、まじめにノートを取っている。
 

 先生は、あいつ等がしてる事に気づいてない。
 てか大体の先生は、この学校で起きてるいじめには気づいてない。
 隣のクラスもそうだったし、無理もないか。

 

 D組の四之宮紘歌。頭が良くて、美人な感じ。でも、いじめっ子だった。それも、結構な−−
 頭が良いせいで、先生達にも信頼があるから、それはバレなかった。一人を不登校に追い込んだ、っていうウワサがあった気がする。

 
 でもそんな四之宮も、停学。
 理由は、雛が殴ったから。雛が殴る原因となったから。
 先生たちはそれでも、四之宮を信じていたらしい。


「……」


 雛とクラスが離れてから、まったく話してない。
 雛は、何で殴ったんだろ。
 そんな事を思ってた時だった。



「外田さん、当てられてるよ」
「へ?」


 四橋にそう言われる。見ると先生が、こちらを見て不思議そうにしている。少しはげかかっている頭が、少しだけ光った気がした。
 それに笑いそうになったが、今は笑ってる場合じゃないよね。
 しかも今は苦手な数学。勉強する気にもなれない。そして全く聞いてないからヤバい。
 
 
 ダラダラと冷や汗をかきはじめたあたしに、四橋はぽつりと呟いてくれた。
 聞かれた問題の答えを。


「答え、X=4だよ」
「外田さん、ここの答えは?」


 追い打ちをかける先生。
 そんな先生に聞かれ、あたしは答える。


「ああ、えっとー。X=4です」
「はい、正解」


 こんな事で平和だなーって感じるあたしは、能天気なんだろうか。
 そして四橋、凄いな。


「四橋、ありがと」
「いいよ。自分も、聞いてない時あるし」


 そう言って、ニコッと笑った。悪い気持ちもない、そんな笑顔。


「……まじめにノート取ってるじゃん、いっつもさ」

「テスト勉強に困らない様に、っていう事だけだよ」


 そういう四橋の指は、少し荒れている。指先に小さな傷があったりする。
 四橋は、お母さんしかいないらしくて、お母さんのかわりに料理をしているらしい。
 そのせいか、家庭科に関してはトップを取った。


 それで、あいつ等にターゲットにされた事があるけども。



 ――四橋は、どう思ってんだろ。あいつ等を。



 あたしはそう思いながら、ニコニコしている四橋を眺めていた。