大人オリジナル小説

Re: 死んでもいいかい? ( No.15 )
日時: 2012/12/04 23:47
名前: カナリア ◆StaIqxr34U

真っ暗な空の下。ロープと自分を安心させるためのカッターを手に持ち、ふらふらと町から遠くにある工場へむかった。
もう誰も使っておらず、誰も覚えてすらいないその工場は、自殺するのにぴったりだった。
今日だけでまた新しい傷がいくつも増えてしまったが、それも今日で最後だ。
最後に再び手首に傷を付け、ロープを手に取る。
更震える手を、見て見ぬふりしてこの世を捨てようとしていたときだった。

「梨乃!何してるの!?」

聞こえた声に、ふるえが止まらなくなり、振り返る。そこにたっていたのは真希だった。
逃げるように一歩ずつ後ろへと歩く。真希との距離はつねに一定になり、私は今すぐ逃げたかった。
真っ暗で真希の表情はよくわからなかったが、おそらく悲しんでいるのだろう。真希はすごく優しかったから。
しかし、今の私にはその優しささえも恐ろしく感じた。
もう、私の秘密は真希に知られてしまったのだ。もう、私は学校にいつも通りに行くことが出来ないのだ。

「来ないでよ!」

泣いているような、かすれた声で必死にそう叫ぶと、真希はピタッと止まってしまった。
そこから一歩も動かずに、私に言った。

「ねぇ。梨乃、もうリスカなんてやめて‥‥‥‥」

リスかなんて、と言った真希に、真希に何がわかるんだ!と言い返したかったが、真希が泣いていることがわかると、罪悪感で壊れてしまいそうになり、そんなことは言えなかった。
かわりに出た言葉は、弱音。

「無理だよ‥‥‥そんな簡単にやめれないんだよ」

今にも途切れてしまいそうな、弱々しいしゃべり方でそう言うと、泣き崩れてしまった。
止まらない涙を何回も服のそででふいた。しかし、服のそでがビショビショになっても涙は止まらなかった。

「帰ろうよ、梨乃」

その優しい言葉に、甘えてしまった。
死ぬのが怖かった。
真希に死ぬところを見られたくなかった。
いろんな言い訳や本音を頭の中で考えながら真希とゆっくり歩き出した。
何かが解決したわけではないが、頑張ってリスカをやめようと思ったのは、確かに真希のおかげだろう。