大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.10 )
日時: 2014/02/15 11:32
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 私がようやく教室に戻ったのは、2人が個室に入ってからの事だった。

……教室に戻った今でも、私はさっきの事を信じられずにいる。
 だって、紗希ちゃんはこんな私とも仲良くしてくれたんだよ? 紗希ちゃんが、あんな事言うはずない。きっと何かの聞き間違えだ。
 私の頭の中では、言い訳を求めるようにそんな言葉が渦巻いていた。
 でも、本当は最初から分かっていたんだ。地味な私と、人気者の紗希ちゃんが釣り合うはずないって。
 そりゃそうだよね。最初から、友達だと思ってたのは私だけだったんだから。なのにちょっと話したくらいで嬉しくなったりしてさ……バカだよ、私。

――その時既に、私は紗希ちゃんに対して複雑な感情を抱いていた。"憎しみ"と"嫉妬"と"憧れ"……いや、それだけではない。もっともっと沢山の感情が混ざり合って、じわじわと私の心を蝕んでいる。
 そのせいだろうか、私は紗希ちゃんの事をこんな風にしか思えなくなってしまった。影で人を馬鹿にして笑っているくせに、その人の前では友達の様に振舞う。
 そんな、八方美人な人間だと――。


 何事も無かったかのように、笑顔で話しかけてくる紗希ちゃん。私はそんな紗希ちゃんに、引きつった笑顔を返す事しか出来ない。
……紗希ちゃんが笑顔の裏で何を思っていたのか、少しだけ知ってしまったから。
 あんな事、知らない方が良かったのだと思う。でも……今更こんな事を考えたって、もう遅いんだ。
"笑いこらえるの超大変だったんだよねー、あの時!"
 あの声を忘れる事なんて、きっと出来ないから。