大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.11 )
日時: 2014/02/17 14:09
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 だからといって私みたいな弱虫に、何か行動が起こせるはずなどない。
……例えば、紗希ちゃんにあの事を問い詰めたりとか。
 そんな事をしたら、余計バカにされてしまう。私はそれが一番怖かった。
 それにそもそも私と紗希ちゃんは、クラスでの立場が全然違う。紗希ちゃんは人気者、私は笑われ者……。きっと私は凛ちゃんが居なければ、いじめられていた存在だったのだろう。

 私って、本当に馬鹿だな。私みたいな人間は、他人を笑わせる事くらいにしか価値が無いのに。それすら出来なくなってしまったら、私は本当にここに居る意味がなくなってしまう。

 そうだ、私はピエロ。強いものを支える為に、笑われる。
 もう、笑われるのには慣れていた。あの時は、ただ相手が違っただけ。
――私はピエロ。もう一度自分に言い聞かせて、私は惨めに生きていく。
 ピエロを辞める日は、来るのだろうか。


 そんなある日、学年中にある噂が流れ始めた。その噂とは、よく思春期にありがちな噂。つまり恋愛関係のものだ。誰かが誰かと付き合っているだとか付き合い始めたとか、はたまた別れたとか。
 今回流れた噂は、清水さんとバスケ部の中村君が付き合い始めたというものだ。バスケ部の中村君は顔も格好いいし、バスケが上手でかなりモテるらしい。そんな人と付き合えるなんてすごいなぁ、とは思う。でも、特に羨ましいとかの感情はなかった。

「ねえねえ、真里! いつから付き合ってたの!?」
「どっちから告白したの?」
 清水さんは休み時間の度に皆に囲まれ、質問攻めされていた。質問に渋々といった感じで答えている清水さんだが、その表情は満更でもなさそうだ。
 この様子だと、しばらくはその噂でもちきりだろう。仕方ないよね、だって相手は中村君だし……。
 私がそう呑気に考えていると、清水さんの傍に居る紗希ちゃんがお祝いの言葉をかけた。
「良かったじゃん、真里!」
 そう言って笑う、紗希ちゃんの笑顔はとても可愛くて。紗希ちゃんがその時何を思っていたのかなんて、誰にも予想出来なかっただろう。