大人オリジナル小説

Re: そこに居たのは、 ( No.2 )
日時: 2014/03/26 22:32
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

プロローグ

――人は皆、誰かを笑って生きている。

「あの子ってさ、いつも本読んでばっかりで暗いじゃん。それにどんくさいし。来年も体育祭の大縄跳びあるのに、あの子のせいで記録伸びなかったらどうしよう!」
「分かる分かる。あの子って、本当に運動神経ないよね。小学校の時もさあ……」

 耳に焼き付いて離れなくなった、私を嘲笑する声。
 本人達は気付いているのか分からないけれど、私には全部聞こえていた。
 けれど私は、何も言えなかった。「やめてよ!」とも「全部聞こえてるよ」とも。
 黙ったままだったのは、私が弱いからと、全部本当の事だから。それに文句を言ったって、どうにかなる訳でもない。
 もしそんな事をしたら、あの人達はより一層私を嘲笑うだろう。反論した時の、私の声色を真似て。
「やめてよ! だって。キモいよね〜!!」
……私はそれが嫌で、何よりも怖かった。
 だから私は何も聞こえなかった振りをして、これからも惨めに生きていくのだ。そんな私の姿を、これからもあの人達は笑い続けるのだろう。

――そして私は、あの子に憧れ続ける。
 嫉妬、という感情に囚われながら……。