大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.30 )
日時: 2014/02/17 14:25
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 よく見るとその1つ1つには乱暴な文字で、紗希ちゃんへの悪口が書かれていた。文面は全部、同じ。
 紗希ちゃんはそれらを机の奧に押し込むと、机の中から本を取り出して読み始めた。
 なのに、まだ後ろの2人は笑っている。その声を聞いて、私はまた気分が悪くなった。

 2人の笑い声が止まったのは、教室に先生が入って来る直前の事だった。
 今は朝読書の時間で、教室はすっかり静まり返っている。
 いつもなら集中して読めるはずの本も、今日は全然ページが進まない。視線は確かに本に向けられているというのに、気づけば私は考える事を最優先としていた。その理由は、自分でもよく分かっていた。
……さっきからずっと、紗希ちゃんの事が気になっていたから。
 私は本を読むふりをして考える。今は本の内容よりも紗希ちゃんの事に興味があった。
 そして突然頭の中に、次々と疑問が浮かんでくる。

 何で、あの人達は笑っていられるの? 
 何で、あんな事本人の前で言えるの? 
 何で、紗希ちゃんは何も言わないの?
 何で、誰も紗季ちゃんを庇わないの?
 何で、何で、何で、何で、何で、何で――。

 狂ったように繰り返される言葉。行き場のない疑問。
 私の心には、もやもやした感情だけが残った。