大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.31 )
日時: 2014/02/17 14:27
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 結局、開かれた本のページがそれ以上進むことは無かった。
 気づかない内に、すっかり時間が経っていたのだろう。全校放送のチャイムが朝読書の終わりを告げて、いつもと変わりない朝が始まった。
 それは本当に平凡で退屈な日常……たった1つを、除いて。

……お願い、早く終わって。もう嫌だ。早く家に帰りたい。
 逃げ道を求める言葉が、私の頭の中で呪文のように渦巻く。
 何事も無かったかのように進む時間が、私にはとてもゆっくりに思えて。授業中にも関わらず、私はさっきから頻繁にちらちらと時計を見ていた。もちろん、先生にはバレないように。
 私は機械的な動作で、黒板に書かれた計算式をノートに書き込む。先生の話なんて、全然耳に入っていなかった。
 勉強が嫌だから早く授業が終わって欲しい、なんて願う小学生みたいだと自分でも思う。
 それでも私が逃げたいと思ってしまうのは、教室に居る事が苦痛で仕方がなかったから。
 教室の異様な雰囲気に、耐えられなかったから。

 いつもと違って1人で居る紗希ちゃんを見ると、胸が締め付けられるように痛む。
 皆、紗希ちゃんには近づこうとしないし、紗希ちゃんが誰かに話しかけたりする事もない。
 まるで、紗希ちゃんの周りに見えない透明な壁があるかのように。