大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.33 )
日時: 2014/02/17 14:32
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

――誰一人として、それを止めようとする者は居なかった。
 それどころか皆、この状況を楽しんでいるようだ。
「中村直輝君! 謝罪会見はまだなんですか?」
 マスコミのつもりなのだろうか。中村君の隣に居る男子が、挑発するようにニヤニヤしながら言う。
 その後に響くのは、大勢の笑い声。女子も男子も関係なく、皆が笑っている。
 中村君は何とか逃げ出そうとするが、周りを取り囲む人達に邪魔され動けないようだ。
「ダメじゃないですか〜中村君。浮気しといてノーコメントなんて」
 それをいいことに、あの男子が更に調子に乗って挑発する。
 浮気、というのは突然紗希ちゃんと付き合い始めた事だろうか。私は本人達に起こった事など噂でしか聞いていないが、おそらくそうなのだろう。

 そして、また皆が笑い出す。それは私にとって、とても不快な笑い声だった。
 ああ、そうだ。これは私が何度も聞いた声。私を嘲笑う声。他人を馬鹿にする事でしか自分を守れない――そんな奴等の声だ。
 あの声に、とてもよく似ている……。
 私は皆と同じように笑う事もせず、ただ黙っていた。それは凛ちゃんも同じだった。