大人オリジナル小説
- Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.37 )
- 日時: 2014/02/26 23:18
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU
気付いた時には、もう遅かった。
「お前ら何やってんだこの! いい加減にしろ!」
先生は、鼓膜が破れそうなほどの剣幕で怒鳴り散らしている。
この先生は普段とても優しくて良い先生なのだが、怒ると人が変わったように怖くなる。そのギャップがある為か、皆は先生の様子を伺い怯えながら、そそくさとその場から逃げるように去っていく。
私と凛ちゃんも、皆と同じ様にその場を離れて歩き始めた。
そしてそこに残されたのは、中村君とあの男子だけになった。後ろからは、相変わらず先生の怒鳴り声が聞こえてくる。
「全く、中学生にもなってこんなバカみたいな事やって……! 恥ずかしくないのか!?」
様子が気になったので、私は歩きながら少しだけ振り返る。あの男子は黙って、俯きながら説教を聞いていた。
中村君は既にそこに居なかった。おそらく、先生に事情を聞かれてその後すぐ解放されたのだろう。だって中村君は、巻き込まれただけだから。
私達は次の授業が理科だった事を思い出し、理科室へと急いだ。さっきの騒ぎのせいか、理科室に来ている人は少ない。理科室には空いている席がたくさんあり、とても不思議な感じがした。
そういえば、さっき教室の前を通った時――慌てて鞄から理科の教科書やノートを取り出していた人がたくさん居た気がする。
皆はきっと次の授業が理科である事も忘れて、あの騒ぎを見物していたのだろう。……私達もそうだけど。
そしてそれから1分も経たない内に、授業開始5分前のチャイムが鳴り始めた。
廊下から、ドタバタと沢山の人が走っているような音が聞こえてくる。
これは、皆が慌てて走っている音だろうか――。私がそう呑気に考えていると、息を荒くしたクラスメート達が理科室に転がり込んできた。それも、沢山の人達が。
授業開始のチャイムが鳴り終わってから5分経っても10分経っても、先生は来ない。ドアをきちんと閉めているというのに、未だに怒鳴り声が廊下から聞こえてくる。
そのせいか教室は不穏な空気に包まれていた。