大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.40 )
日時: 2014/02/17 14:52
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 その原因は、私が見たある光景だった。
 私はあの騒ぎに気を取られて、さっきまですっかりこの事を忘れていた。
 私の右隣にある、今は誰も使っていない丸い木のイス。そのイスを使っているのは、他の誰でもない紗希ちゃんだ。紗希ちゃんは今実験道具を取りに行っているから、空席になっているだけ。
 そう――この班の班長は、紗希ちゃんなのだ。この事に気付いた瞬間、何だか嫌な予感がした。
 けれども無意識の内に私の視線は、右横に向けられていた。つまり……班長達が集まっている方向に。
 この時私の目に映った光景こそが、耳鳴りを悪化させていた。

 実験道具を取りに来た班長達は、我先にと押し合って――いや、押し合っているのではない。一方的に、押しているのだ。それも、紗希ちゃんだけを狙って。
 そのせいで紗希ちゃんは、班長達の中で一番後ろに追いやられていた。
 先生は今丁度目を離していて、そんな光景には微塵も気付いていない様子だった。

……そして、私は見てしまった。
 ある班長の女子が、実験道具が入ったカゴを持って紗希ちゃんの傍を通った時――。紗希ちゃんの足を、蹴り飛ばしたのを。
 突然の事に、反応出来なかったのだろう。紗希ちゃんは少しふらついたが、すぐに持ち直す。
 私はそんな紗希ちゃんの事を、可哀想だと思った。ざまあみろとも思った。

 先生の視線は相変わらず、別の方向に向けられたままで。