大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.46 )
日時: 2014/02/17 15:01
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 胸の内に罪悪感を感じながらも、私は何も出来ずにいた。ただひたすらに心の中で謝っても、この状況は変わらない。
 紗希ちゃんが戻って来てからは班の中で必要最低限の会話しか無かったのが、唯一の救いか。

 実験は急ぎ足で進められたが、やはり時間が足りなかったのだろう。実験結果を書き込むプリントの空欄が全て埋められる事は無く、中途半端な状態で授業が終わってしまった。
……ちなみに実験が終わらなかったのは、私の班だけなのだが。
 それなのに先生は、授業が遅れた事をこれでもかというくらい必死に謝っていた。もちろん、そんな先生を責める非常識な人など居ない。
 そうして授業が無事に終わると、皆はいつもよりおしゃべりの声を控えめにしながら次々と理科室から出て行く。私もいつも通り、凛ちゃんと一緒に教室へ向かう。

――廊下に出てから聞こえたのは、溜め息と共に吐き出される愚痴と悪口だった。
 それが誰に向けられている物なのかは、言わなくても分かるだろう。
 先生の代わりに責められたのは、可哀想な"あの子"なのだから。そしてそれゆえに、私は苦しんだ。
 まるで自分が悪口を言われているように感じて、頭がくらくらした。思わず叫びたくもなった。

「あーあ、結局全然実験出来なかったじゃん。他の班は全部終わってたのにね!」
――やめて。
「久しぶりの実験だから楽しみにしてたのにさぁ……最悪なんですけど」
 やめて……やめてっ!
「誰かさんのせいだよね、ホント。あいつが持ってくるの遅いから……マジで人の迷惑考えろって感じじゃない?」
 もう、やめてよ……!

 私の心の叫びは、誰にも届かない。
 そしてそのまま、余韻を残して静かに消えていった。