大人オリジナル小説
- Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.50 )
- 日時: 2014/02/17 15:07
- 名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU
だから、これは仕方のない事なんだ。あの光景から、目を逸らすのも。見て見ぬ振りを、する事も。
全部、全部――"仕方ない" だから私は、悪くない。悪いのは、全部あいつらだもの。
私は何もしていない。あの子の悪口も言わないし、だからと言ってあの子を笑ったりもしない。
それに……私と同じ様な立場の人は、このクラスに沢山居るじゃないか。
ただ見ているだけの、傍観者。その数は、あいつらなんかよりもずっと多いだろう。
……多い方が、正しい。それが世の常なのだから。私の選択は、間違ってなんかいない。私は、正しいんだ。
それが苦しい言い訳だという事は、自分が一番分かっていた。
分かっていてもなお、私は言い訳を繰り返す。いじめに加担している、という罪悪感から逃れるように。
――その一方で私は、この状況を楽しんでもいた。
以前はあんなに明るかったのに、今ではもうすっかり変わってしまった可哀想なあの子。私を影で笑っていた、八方美人なあの子。
"笑いこらえるの超大変だったんだよねー、あの時!"
……そしてまた、あの子の声が脳裏に蘇る。
私は、あの子を許せない。あの子が、憎い。
今まで閉じ込めていた感情が、環境の変化と共に少しずつ顕わになっていく。
憎い相手が、皆に嫌われ疎まれている。それを見るのは、とても楽しい。
誰かがあの子の悪口を言う度に、私は心の中で同調した。罪悪感と理性がそれを止めても、あの子への憎しみは消えない。
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