大人オリジナル小説

Re: そこに居たのは、 ( No.8 )
日時: 2014/02/17 13:48
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 憂鬱な体育の授業が終わってしまえば、後はあっという間に終わる。
 そうして理科、国語、数学、美術と時間はどんどん過ぎていき、やがて帰りの会の時間になった。
 私はその間いつも、真面目に話を聞いていない。もちろん怒られるのは嫌だから、怒られるような行動はしない。真面目に話を聞いているように見えるような、そんなふりをしている。だから私は先生の話なんて殆ど聞き流してしまっているし、大事そうな事しか記憶に残さない。
 ちなみに今日先生が言っていたのは、"明日席替えがある"と言う事だった。席替えか……。あまり期待はしないけれど、凛ちゃんか紗希ちゃんと一緒だと良いな。
 私は淡い期待を胸に、学校での一日を終わらせた。

 次の日。私は幸運な事に、学校を休む事ができた。ズル休みではない。ちゃんと"風邪"という理由がある。
 症状は熱と、喉の痛み。少し苦しいけれど、これで学校を休めると思えば安いものだった。
 わざわざ学校まで行く必要もないし、面倒な授業も受けずに済む。
 授業には、少し遅れてしまうかもしれない。でも、1日くらいなら多分大丈夫だ。ノートを借りて勉強すれば、すぐに取り返せるだろう。
 だから今日は何もせずに、ただ寝ているだけでいい。そんな状況に嬉しさを感じながら、私は安心して眠りに就いた。

――結局その日は殆ど寝て過ごし、次に目が覚めた時には朝だった。
 まだ喉が少し痛いが、どうやら熱は引いたらしい。ぼんやりとした眼差しで時計を見ると、その針は午前5時を指していた。まだ起きるには早い時間だと思ったが、二度寝する気にもなれない。
 私は起きるか起きないかベッドの上で考えた後に、結局起きることにしたのだった。

 そんなに長くはない階段を、静かに降りていく。
 1階に着いてすぐ、私はリビングの扉を開けた。すると、中に居たお母さんと思わず目が合う。
 私がとっさに「おはよう」と言うと、お母さんが挨拶の代わりに「熱はもう大丈夫なの?」と言ってくれた。
「もう大丈夫みたい」
「そうなの。良かったわね」
 そんな会話を交わした後、私はリビングに入って椅子に座る。私はお母さんと一緒に、テレビのニュースを見てしばらく過ごした。
 その後私は朝食をとり、学校へ行く準備も全て終わらせた。そしていつもより少し早く、家を出て学校へ向かう。

 学校に着くと、教室には誰も居なかった。今日は少し、家を早く出たからだろうか。いつもは少なくとも2、3人居るのにな……。
 私はそんな事を思いながら教室に入り、自分の席に鞄を置いた。それから教室の後ろにある上着掛けに、上着を掛けにいく。
 そして上着を掛け終わり、席に戻る途中――私はある事を思い出した。ある事とは一昨日、先生が帰りの会に話した事だ。「明日席替えがある」……先生はそう話し、昨日私は欠席した。つまり、席替えが既に行われている。