大人オリジナル小説

Re: 【壊れた教室】そこに居たのは、 ( No.80 )
日時: 2014/03/11 21:31
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 その音は、まるで鐘のように私の中に響く。
――話しかけられた事に気付き、ふと横を見ると凛ちゃんが不安そうにこちらを見つめていた。
 私は凛ちゃんに笑顔を返し、予め机の上に用意してあった美術の教科書を持って席を立つ。
「じゃあ、行こうか」
 そんな風に私が言って、2人で一緒に居心地の悪い教室を出て行く。

……教室の中から聞こえてくる、あの子に対する暴言など聞かなかったような振りをして。

 今日の美術は何やるんだろうね、とか、最近妙に宿題の量が増えたよね、だなんて他愛のない話をしていた。
 会話の内容はいつもと全然変わらないのに、何となく気まずい空気が続いて息苦しくなる。さほど遠くない距離にある美術室が、まるで何100mも先にあるかのような錯覚に陥った。

 美術室は、廊下の突き当たりにある。
 どうやら私達は早く着きすぎたようで、美術室周辺に人の姿は見当たらない。教室の中をちらりと覗いてみても、そこには誰も居ない。
 古いせいか建付の悪い木の扉も、固く閉ざされたままだ。