大人オリジナル小説

Re: ――いつかきっと、受け止めて ( No.96 )
日時: 2014/02/15 13:39
名前: 杏香 ◆A0T.QzpsRU

 私もそんな"人間"の一員である事は、火を見るよりも明らかで。それを否定する気など毛頭無いが、認めるにはまだ少し抵抗がある。
 何せこの社会では昔から"人の為に生きる"事が美徳とされ、自分勝手な感情や嫉妬、また憎悪の念を抱く事は禁忌だったのだから。
 私の中にも焼け付く程その考えは染み付いていて、他人を蔑む事にささやかな嫌悪を感じずにはいられない。

 それでも人間というものは、やたらに人と自分を比べたがる。自分よりもその人の方が優れていると分かっても、傷つくのを恐れて自分の方が上だという事にしてしまう。
 自分だって影でこそこそ悪口を言っているくせに、いざ自分が言われているとなると憤慨する。そしてまた人を嘲笑って、自己嫌悪に陥るのだ。

 私が言うのも何だが、本当に人間は面倒くさい生き物だと思う。そんな面倒くさい生き物が沢山集まっているのだから、人間関係はもっともっと複雑だ。
 普段どんなに仲良しこよしのグループで固められていても、少し力を加えただけで呆気なく壊れてしまう。それ程不安定な関係の中で、嫌われないよう上手く生きていくのはとても難しい。
 嫌われない為には、相手が一番望む事を見極め、行動に移さなければならない。だがそれには高度な技術が必要不可欠で、誰もができる事じゃない。なぜかというと人間は、本音とは裏腹に矛盾した行動を多く取るからだ。
 1人が気楽と呟きながらも、本当に1人になると孤独を嘆く。何かに気付いて欲しいと思っていても、決してそれを口に出さず隠し続ける。

……自分の気持ちや感情を全て知る事もできないのに、他人を理解するなんてなおさら無理に決まっているじゃないか。

 私は行き場のない思いを、ただひたすらに書き殴る。それは一枚の絵となって、プリントに刻まれた。
 やがて鳴るチャイムの音が、私を安心させてくれるだろう。