ー見覚えー
「ーーーー…...じゃあ今から一人一人自己紹介してもらうぞー。出席番号順に頼むな。」
新しい先生(杉内先生)が来て、自身の自己紹介をしたあと
今度はあたし達がすることになった。
このクラスは男子20人、女子16人の計36人と
若干男子が多いがごく普通のクラス。
席は6列にそれぞれ6席ずつになっていて一つずつ離してある。
出席番号順ということは、
あたしから見て左側の列の1番前の席の人からだ。
自己紹介、、、。
正直苦手だな、。
いや、多分みんなも嫌いだと思うんだよね〜。
…あたしの予想通りか、
「自己紹介?!うわーやだわー!ねー!茜〜」
「うん…。あたしも苦手、、」
バッと勢いよく後ろを振り返った唯菜。
と同時に
「あたしもこういうの苦手〜!!恥ずかしいよね!」
後ろから身を乗り出してあたし達の会話に混ざる琴。
あたし達だけではなく、
周りからも「嫌だ」、「怠い」、「恥ずかしい」等
溜め息混じりの文句がチラチラ聞こえる。
自己紹介、
人見知りなあたしにとっては難関の難関。
上手く喋れるといいけど……。
「ーーーー…...言ってもらうのは、名前、出身中学は必須。あとはなにか一言だ。まずは、、、安西から」
ーーービクッ
………身体が無意識に反応した。
少しだけど手足が小刻みに震える。
確かに自己紹介は嫌だけど、それだけで震えたりしない。
まだ我慢はできる。
あたしが反応したのはーーー、、、
"出身中学"
瞬時に中学時代の自分が脳裏にチラつく。
、、思い出したくないものたちが何個も浮かんでは消える。
"きもーい!!!"
"学校来んな!!!"
"消えろ!!!"
ーーー"死ねよ!!!"
「っ!」
「ーーー………です。よろしくお願いします」
そしていつの間にか始まっていた自己紹介。
順番は既に先程喋った琴の友達、篠塚さんまでまわっていた。
「ーーー……です。よろしくお願いします」
順々に終わっていく自己紹介、
あたしも時間が経つにつれ震えはおさまった。
……大丈夫、あれはもう過去の話。
あたしの事を知ってる人なんていないんだから、、
ーーーそう思っていたのも束の間。
信じたくなかった。
嘘だと言ってほしかった。"なんで…?"ーーーまさにそれ。
「館野柚。燐洋中学出身。…よろしくお願いします」
ーーーガタッ!!!
「ん?牧野…だっけ?どうかしたか?」
ーーーなん、、で、、、
なんであなたが、、ここに…??
ここにはいないと思ってたのに……
彼女は何事もなかったように、
あたしを一切見ずに席に座った。
“燐洋中学”ーーー。
それは、あたしの出身中学。
彼女ーーー館野柚は、、、
中3の元クラスメート。
ーーー冷汗が流れた。