ーうわの空ー
ーーーーー……。
何も入ってこなかった。
殆ど聞いてなかった。
自分の自己紹介も平常心を装いながら、でも結構バレバレで
手短に終わらせたものの、あまり記憶にない。
唯菜の自己紹介も琴の自己紹介も、全くのうわの空。
気がつけばHRは終わっていた、みたい。
「…、っ、」
そして湧き上がるのはやはり″彼女″で、。
(なんで、?なんで、、館野さんがここに…?
選りに選ってなんで彼女が…)
「…ね…」
「…。」
「…か…ね、」
「…。」
「あかねっ!!」
「…!!!ぇ、」
言葉よりも先に身体が反応した。
目の前には唯菜と琴。
「やっと気づいた〜!どうしたの?大丈夫?」
「さっきからずーーっとうわの空だったんだけど!」
「ご、ごめん…」
全然気づかなかった……
「てか、館野?さんだっけ?あの子と知り合い?さっきの反応っぷりだし」
唯菜が彼女の方に目を向ける。
「う、うん…!ちゅ、中学が一緒で…」
「へぇ〜!なんか自己紹介で分かったってビックリだね!」
「そ、そ…うだよ!ほんとビックリしたから
思わず席立っちゃったよ…!」
話を早めに切り上げたい一心で、無理に笑顔をつくる。
口が焦る度、平常心は保てない。
でも2人にはばれていなかったから幸い…。
ーーーーーーーー……
ーーーーーーーー……
結局、そのあとの行事も頭に入ってこなかった。
学校紹介、クラブ紹介、係決め、等たくさんあった。
ただぼーっと聞いてて余りものの係になって。
2人が話しかけてきたときはちゃんと聞いていた。
また気づかれたら流石に何か思うからな…。
ーーーーーそして時間は早く、既に放課後。
今日までは午前中だから午後前には終わった。
「っ!」
あたしは、クラスの誰よりも早く教室を出る彼女を視界に捉えた。
彼女は一人教室を静かに出て行った。
、、、やはりこういう時も身体が先に反応して。
「二人とも、!ばいばい…!」
「茜帰るの?部活見に行かない?」
「ごめん…!今日用事あるんだ…!」
「それならしょうがないね!また明日!」
「ホントごめんね…!」
折角誘ってくれた琴を断って、あたしも急いで教室をでた。
「え!!!茜どこ行くの!」
「唯菜、茜今日用事あるーーー…」
最後あたりに唯菜の声が聞こえ、琴が説明してくれたところで二人の声は遠ざかった。
ーーーーーーーー…
「ま、、、まって!!!館野さんっ!!」
玄関近くで彼女、館野さんに追いつき呼び止める。
と、同時に館野さんの足は止まる。
「………なに」
彼女の声は冷たかった。