ー冷たい彼女ー
「………なに」
ーーービクッ
「…っ、」
返ってきた返事はあまりにも冷たくて、身体が無意識に反応する。
あたしを捉えた彼女の双眸は鋭く重く、思わず目を逸らしてしまった。
「ぁ、あの…ぇと…」
目が泳ぎがちになり
うまく口が動かず、何度も噛んでは最後、、
「…っ」
自ら沈黙を作る羽目になる。
なにか言わないと、、
なにしに来たのか分からない。
でも、
言葉を見つけ出せない。
「び、びっくりしたよ…!
まさか、館野さんがいたなんて…!ハハ…」
そして咄嗟に口が開いた。
誤魔化すように話を繋げるように。
「あたし…、燐洋の人は誰もいないと思ってたんだよね…!」
「…」
「ほ、ほら!あたしの家、燐洋から遠かったからさ!
ここは近いし…ね!」
「…」
「あ、!館野さんはどうしてここを選んだ…「話はそれだけ?」
「…ぇ…、」
ーーーーー気づけば一方的に話しかけていた。
その終止符を打った彼女は強制的にあたしの口を止めた。
やっと口を開いた館野さんからでた言葉は
あたしが望むべき答えではなくて。
彼女の素っ気なさに、顔が俯きそうになる。
溜め息混じりに館野さんは続ける。
「″そんなこと″を言うためにわざわざ私を呼び止めたの?」
ーーーそんなこと。
「そんなの、明日にでも話せばいいでしょ」
「…ご、ごめん…」
勢いに押され「ごめん」と言ってしまう。
これじゃああたしが悪いと肯定しているようで。
思わず鞄を持った両手に力が入る。
「私がどの高校行こうと私の勝手」
ブレザーのポッケに両手を突っ込む館野さん。
此方は見ず何処かに視線を送っている訳でもなく、
そしてまた此方に視線を戻す、と。
「そもそもアンタに言う義理はないと思うけど」
他人、のようにあしらう館野さん。
まあ…中学の頃もそこまで仲がイイということはなかったけど…
でもあたしと館野さんは…、、
「っ…」
あたしが喋る隙を与えない彼女。
先程とは立場が逆転していた。
そしてあたしは、次に降りかかる彼女の言葉に
心臓が止まりそうになった。
だって、、、
「ーーー私がココにいて、同じクラスで嫌だったでしょ」
「っ、!……い、嫌じゃない」
「ふっ、図星?」
「っ……」
………正にその通りだったから…、
ドキッとした。
口だけ笑う彼女をうまく見ることは出来なかった。
その後にくる罪悪感に浸れてしまう。
″あなたが嫌い″ーーーと。
遠回しで言ってしまったから。
「ま、どうでもいいケド」
そう呟くと館野さんは踵を返して戻ろうとする。
呆気を取られ、あたしが言う前に彼女が言った。
「アンタ、前と全然変わってないね」
「え…、それ、どういう…」
「そういう″性格″
アンタのまわり、いつか崩れるよ」
「!!!!!」
そう言い残し、館野さんは学校を出て行った。
ーーーーーそんなの、あるわけない……
崩れるなんて…ありえないーーーーー……
もう、
以前のあたしじゃない…。
あたしは上手に泳いでいくんだから、、
″いつか崩れる″
その″いつか″が″いつ″になるのかは
このときのあたしは知らない。