大人オリジナル小説

Re: シニタイ ( No.10 )
日時: 2013/08/31 08:37
名前: ミム

七話


たすけて助けてタスケテ―――
お願いです、神様…


「―――田さん!羽田さん!」


誰?


「羽田さん!やっと目を覚ましたのね。よかったわ。」


あのときの…


「ハッ…!」

「大丈夫?」

「う、うん…」


あの時トイレで私を庇ってくれた子の声に似ている。
しかも私と同じくらいの年の子だ。


「あなたは誰…」

「あぁあなたは私を知らないのよね。私は大野岬。
ところで本当に大丈夫なの?」

「大丈夫…だと、思う。」

「その様子じゃ大丈夫じゃなさそうね。来て!」

「えっ…!?」


私は大野さんに手をひかれると公園に連れて行かれた。


「ここに座って。」


私は指示通り木でできたベンチに座った。

そして大野さんも私の隣に座る。

沈黙の中私達は真っ赤な夕日をただ眺めては俯いた。

でもそれは気まずいとかじゃなくて心地よかった。
大野さんは私に何も聞かないんだね。


「何も聞かないの?」

「何を?」

「ううん、何でもない。」

「そう。」


こんな日常の会話は久しぶりだ。

少しだけにじむ涙を私は必死に隠した。


「ただ私はあなたを知っている。それだけよ。」


その言葉に意味があるのかは分からない。
だけど私はこの時まだ気付かなかった。

あの人だと…


七話 完