大人オリジナル小説

Re: 校内格差、【更新中】 ( No.28 )
日時: 2013/04/07 19:09
名前: 村雨 ◆nRqo9c/.Kg

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 うちの学校では、必ずしも部活に入らなくてはいけない、というわけではない。しかし実際、九割以上は何らかの部活に所属しているため、部活に入っているのは当たり前だという認識がある。帰宅部といえば、むしろ少数派だ。
 それから部活をやっている人の間では、比較的運動部の方が明るくて異性にもモテる、そんな感じ。男子は恐らく、ほぼ全員が運動部に所属しているのだと思う。
 一方文化部というと、大人しい人が所属しているイメージ。悪く言えば、暗いということだけど。
 私が所属している吹奏楽部は文化部だけれども、練習のハードさは運動部にも負けていないのではないか、と思う。うちの学校の吹奏楽部は顧問の先生が怖いと有名な斉藤先生で、毎日の練習も下校時間ぎりぎりまで続く。
 そういったこともあってかうちの学校では、吹奏楽部は運動部と文化部の中間に位置している、という認識が広がっている。

 帰りのホームルームが終わると、私は音楽室に楽器を取りに行く。
 今日は自主練といって、各自空いている教室などで練習をする日だ。先生がずっといるわけではないから、楽で良い。

「紗綾っ」
 後ろから肩を叩かれて振り返ると、凌香が立っていた。
 彼女は私と同じく吹奏楽部で、自主練の日は第二音楽室でいつも一緒に練習している。

 凌香と一緒に特別棟三階にある第二音楽室へと向かう。
 廊下でお喋りに興じている人たちの間を通り過ぎ、第二音楽室に着く。まだ誰も来ていないみたいだった。中に入り、電気を点ける。

 適当に椅子を引っ張り出してきて、楽器の準備をする。私はホルンで、凌香がフルート。収納ケースを開けると、金色に輝くホルンが現れた。傷を付けないよう、慎重に取り出す。

 ふと、私の近くで楽器の準備をしている凌香に目を向けた。
 彼女は、私の数少ない小学校からの友人だ。小学校四年のときに初めて同じクラスになった。休み時間に私が一人で本を読んでいたら、凌香の方から話しかけてきたのが最初。

「玉城さん、何読んでるの?」
 私は初めて凌香と話したときのことをよく覚えている。
 それまでにも一人で読書をしているとき、クラスの女の子たちに話しかけられることは何度かあった。でも彼女たちは、裏で私のことを見下して笑っているような気がして、正直あまり好きにはなれなかった。
 いつも集団で固まって、中身のない会話をして騒いでいる。そんな印象だった。私は心の中で彼女たちを軽蔑していたのだと思う。まあ、今の私はまさしく彼女たちと同じなのだけれど。

 ────凌香は、違っていた。
 私に話しかけたのも興味本位などではなく、純粋に仲良くなろうとしてのことだったのだと思う。
 そのとき凌香は私と同じく、クラスの中で特定の友人もあまりいないようだったし、私も彼女が自分と同じ雰囲気を持っていることを感じていた。
 そうした親近感からか、私と凌香が心の距離を縮めるのに、大して時間はかからなかった。