大人オリジナル小説
- Re: 学級崩壊 ( No.13 )
- 日時: 2013/04/28 13:33
- 名前: 哀歌 ◆dcuKuYSfmk
3話 始業式
上下赤いジャージを着た男性教師が教室に入ってくる。
父親と同じ、煙草の匂いがした。
「座れ」という指示が出て、私達は席に着く。
気に入らない。命令口調も、煙草を吸ってるところも。全てが。
「宮本篤司(ミヤモトアツシ)です。1年間、よろしくお願いします」
彼は簡単に自己紹介を済ませると、私達を廊下に並ばせた。
始業式が始まる。
「(綾。怠いな)」
「(だね。眠いし)」
ぼそぼそと奈々ちゃんと会話をしていると、ぽこんと頭を叩かれた。
「体罰はんたーい!」
奈々ちゃんが、叩かれた頭をさする。
「奈々ちゃん、大丈夫? 先生、最低です! 女の子に手をあげるなんて……! 教師失格じゃないですか!?」
「うっわ。サイテーじゃん」
数年前、私をいじめた男子・荒川ルカ(アラカワルカ)が加勢する。近づくな、山猿が。
「だよね〜」
その周りの男子も同意する。
「綾乃ちゃん、奈々ちゃん、大丈夫?」
髪の長い女の子・駒板胡桃(コマイタクルミ)が話しかけてくる。
「私は平気だけど……奈々ちゃんがっ……!」
私は、涙をぽろぽろと流す。
私、嘘泣きは得意なのよ。
「うわ、泣かせたぁ〜」
荒川ルカが、笑いながら言う。
「土下座しろよ」
蔑んだ目で、男子のリーダー・渡辺剣(ワタナベケン)が言った。
我がクラスの男子は調子に乗り、渡辺剣を中心に騒ぎ立てる。
教師も、校長も見て見ぬ振りだ。どうして?
「センセ、さっさと土下座。私の友達泣かせた罪は重いわよ?」
言葉が湧き出てくる。嫌だ。何でこんな言葉ばかり……?
「あれぇ? 出来ないんですかぁ?」
蔑んだ目で、彼を見る。
「綾……?」
「奈々ちゃん、大丈夫? もう痛くない?」
「うん、平気」
「良かったぁ〜」
私は、笑顔を浮かべた。
「全学年、今すぐ教室へ戻りなさい。5年A組、高学年という自覚を……!」
「何で、止めなかったの?」
教頭先生の言葉を遮る。
「可笑しいよ。教師でしょう? それとも……何。自分が標的になるのが怖かっただけ?」
言葉を切り、教頭を見つめる。もう、私の中に、「教師に対する尊敬」なんて、残っていない。元から無かったのかもしれない。
「やっぱり、教師なんて信じるものじゃありませんね。あの時と同じーー」
「あの時」という単語に、教頭や、この学校に長くいる教師は顔を青くした。
「あの時に私が死んでいたら、あんたらはどんな反応をしたんでしょうね? 見たかったわ」
冷めた瞳で、淡々と教頭を責める私は、とても怖かったでしょう。
「ーー嗚呼、死んでおけば良かった」
私は、教頭を睨んだ。
「皆、戻ろう」
「待ってよ、綾ぁ〜」
奈々ちゃんに続き、クラスの皆は私に着いて来た。
嗚呼、どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。
ごめんなさい、先生ーー
なんて、思っていないわ。
当然の報いよ。
「……雪乃。あと少しだ。復讐、出来るよーー」