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雪乃の過去　私が相談しなかった理由

「……楽しそうだな、皆」
私ーー雪乃は、ふわりと綾乃の背中におぶさる。
「……雪乃？」
「綾乃、聞こえる？」
「雪乃……どうして……」
綾乃は、私の姿を探して視線を泳がせる。
「私にも分からないよ。気がついたらここにいたの」
私はクスリと笑い声を漏らす。
「ねぇ、綾乃。風鈴草……覚えてる？」
「忘れるわけがない……」
綾乃は、泣いていた。
「なんで……なんで相談してくれなかったの……？　私、雪乃には何でも言って欲しかった!!　5分早く生まれたけど、お姉ちゃんだったから!!　……雪乃。もっと早く相談して欲しかった……!!」
泣き出した綾乃を、荒川が抱きしめる。綾乃を幸せにするのなら許してあげよう。

「綾乃、そしたら宮本を殺しちゃうかもしれないじゃない。姉を人殺しにはしたくなかった……」
「雪乃の為なら人殺しになっても良かった……!!　黙って死なれるくらいなら、いっそ人殺しになった方が良かった!!　雪乃の居ない人生なんて考えられないよ……」


「……綾乃の人生は綾乃のもの。私の為に生きないで」


お願いだから、私の為に生きないで。
綾乃の人生は綾乃のためにあるんだから。
それが、私の願い。
お願い、綾乃。

自分の為に生きて。

「でも……!!」
「それが、私の願い」
「……雪乃……」
「そろそろ行かなきゃ」
私は微笑み、意識を手放した。





ねぇ、綾乃？





私のために生きなくても、良いんだよ。
私は確かに宮本にストーカーされてたけど、最終的に死を選んだのは私。
私は私の意志で、死を選んだ。
だから、綾乃は復讐なんてしなくても良いんだよ。

綾乃、前を向いて生きて。

私のことを忘れて、幸せになって。

自分の人生を、自分のために生きて欲しいから。

私はもう、綾乃の負担になりたくない。



綾乃、幸せになってね。




ばいばい。