大人オリジナル小説

Re: 学級崩壊【クライマックス&参照1000突破!】 ( No.198 )
日時: 2013/08/02 21:04
名前: 哀歌 ◆wcVYJeVNy.

制裁与えちゃだめですって!!w


********

36話 学級崩壊


校長、教頭、教育委員会の先生、保護者の方々が続々と教室に入ってくる。
今日は授業参観。
あと5分で授業が始まるが、誰も席につこうとしない。
校長や教頭の視線も気にしない。

ーーそう。

私が考えた作戦は、授業参観を利用して宮本の教師生命を終わらせようということ。
普通の授業参観じゃいけない。
今日の授業参観を利用すればきっと、宮本の教師生命を終わらせることができる。

授業開始のチャイムと共に、宮本が入ってくる。
皆は私の元に集まり、騒いでいる。
日暮香奈を筆頭に、復讐反対派は大人しく座っている。
宮本は驚いた顔をし、私を睨みつけた。
私は微笑み、麻里乃ちゃんに目配せをした。

「なんで教壇に立ってるの? ……人殺しのくせに」

麻里乃ちゃんの瞳は、涙で濡れていた。
まるで、自分も宮本を憎んでいるかのように。

「麻里乃!!」
阿伊染シュラの厳しい声が飛ぶ。
「うるさい。何か用?」

「……イジメってさ、やった方の『心』には残らなくても、やられた方の『心』には永遠に残るんだよ」

「俺みたいにね」と彼女は微笑んだ。

「……知ってるよ、そんなこと」
私は彼を睨みつける。

「私は双子の妹を失った。雪乃はまだ8歳だったんだぞ!? その命を宮本が奪った!! 雪乃はまだ、生きられたのに。なんで雪乃が死んで、宮本が生きてるの!? なんでストーカーなんかしたの!? なんで笑っていられるの!? なんで罪を償おうとは思わないの!? 宮本!! 答えなさいよ!!」

私の瞳から、涙が流れる。
答え方によっては、宮本を殴っても良かった。

「なんで“過去のこと”をそんなに引きずっているんだ?」

宮本は笑った。

「……ふざけんなよ……!! お前には罪悪感というものがないのか!? 雪乃は笑うことすら出来なくなった!! 全て……お前のせいだ!!」

「罪悪感? 無いな。あいつが勝手に死んだんだ」

宮本は笑った。とても気持ち悪い笑い方だった。

「……雪乃は……こんな奴に……!!」

どうしてもっと早く気付けなかったんだろう。
どうして雪乃の苦しみに気づけなかったんだろう。
どうして雪乃を助けられなかったんだろう。

力が抜け、座り込む。
涙が溢れ、前が見えない。


「私が死ねば良かったんだ……!!」



優しくて可愛い雪乃より、私が死ねば良かった。
雪乃なら、皆を幸せにできた。


「綾乃!!」
ルカの声と共に、鋭い痛みが右頬を襲う。
「死ねば良かったなんて言うな!! 俺は綾乃が居なきゃダメなんだ!!」
「……ルカ……」
痛くて泣いてるんじゃない。
ルカが私を必要としてくれたことが嬉しくて。
涙が止まらなかった。

「……ごめんな、殴って」
ルカが今にも泣き出しそうな顔で私の頬を大きな手で包み込む。
「ううん、平気だよ……」
頬はまだ痛かったけど、ルカの手のおかげで少しずつ痛みが引いていくような気がした。
「保健室行こう」
「大丈夫だよ、これくらい……」
「俺が嫌だ。傷つけたのは俺だけど……綾乃の顔に傷を残したくない」
ルカは私の肩を抱く。
「行こう」
私は頷き、立ち上がった。

保健の先生は居なかった。
2人しか居ない保健室は静かだった。
大人しく椅子に座っていると、ルカの手が私の頬を包む。
「……痛かっただろ、ごめんな」
「大丈夫だよ」
「唇切れてる。微妙に頬が腫れてる。大丈夫じゃないだろ……」
ルカは傷を消毒し、湿布を貼ってくれた。
「ありがと、ルカ」
私は微笑んだ。
「……少しだけ、俺の話を聞いてくれるか?」
「……うん」
ルカは私の隣に腰を降ろすと、話し始めた。

「……俺さ、綾乃が宮本に復讐するのを見ているのが辛かった。
綾乃、いつも泣いてるような気がしたから」

「……私が、泣いてた?」
「ああ。綾乃が復讐をやめるって言った時、本当は嬉しかった。綾乃がもう苦しまなくてすむから」
ルカは微笑み、言った。

「これで安心して、東京へ行ける」

「……え?」
私は、俯いていた顔を上げる。
「……俺さ、行くことにしたんだ」
「……どうして……?」
「このままじゃ、俺は綾乃を守れない」
「……ルカ……」
私は思わず、ルカに抱きついた。
「……守ってくれなくてもいい!! ……そばにいて」
「……ごめんな、綾乃。それじゃあ俺が嫌なんだ」
ルカが私の頭を撫でる。

「……高校卒業したら迎えに行くから。だから、待ってろ」

「……うん、待ってる」
私は頷くと、立ち上がった。

「……金曜日までに、たくさん思い出作ろ!!」

私は笑顔を作り、ルカに手を差し出した。
「……ああ、そうだな」
ルカは私の手を握り、立ち上がった。
……ルカと別れる日まで、笑顔でいよう。
もう、泣かない。
「教室戻ろ」
「ああ」
私達は、手を繋いだまま教室に戻った。
教室に入った瞬間、奏に抱きつかれる。
「綾乃ぉぉ!!」
普段冷静な奏がこんなに取り乱している。何故。
「……奏?」
私はわけも分からず、奏の髪の毛を撫でた。
「……綾乃、荒川さんが東京行くって……」
「……知ってたの?」
「渡辺さんから……」
私は、渡辺を見る。
「ルカから、メールが来たんだ。『俺、やっぱ東京へ行く。皆に伝えておいてくれ。綾乃には俺が直接伝えるから言うな』と」
「……ごめ……もう、限界……」
さっきから堪えていた涙が、頬を伝った。
ルカと別れる時まで、笑顔で居ようと決めていたのに。
もう泣かないと誓ったのに。
「……ごめん……少しだけ、このままで居させて……」

少しだけ、泣かせてください。