大人オリジナル小説

Re: 学級崩壊【クライマックス&参照1100突破!】 ( No.235 )
日時: 2013/08/14 16:08
名前: 藍里四季

41話 タイムリミット

今日の夜、ルカが宮城を発つ。
たくさん思い出を作った。
たくさん話した。
これで、きっと笑顔で別れられる。
そう思った。





「……もう、行っちゃうの?」
東京行きの新幹線は、あと30分で発車する。
「あと少しだけ、綾乃のそばに居るよ。
「俺らの存在忘れてない?」
渡辺が腕を組む。となりには、麻里乃ちゃん。
昴お姉ちゃん、清羅お兄ちゃん、それにクラスメイトも居る。
「訂正します。皆のそばにいるよ」
「なら良し」
渡辺は、満足そうに頷いた。


「……そろそろ行かなきゃな」
「……そっか」
涙で視界が歪む。
発車まであと5分。
「……綾乃」
「なに? ルカ」
ルカは、ポケットからあの日買った小箱を取り出した。
跪き、微笑む。

「高校卒業したら、俺と結婚してください」

「……はい」
私は、泣きながら微笑んだ。
「綾乃、待ってて。高校卒業したら迎えに行くから」
ルカはそう言い、私の左手の薬指にリングをはめた。
「……うん、待ってる」
ずっと、待ってるよ。

発車まで、あと3分。

「……じゃあ、1ヶ月後」
「うん。プレゼント、期待してて」
「ああ!!」
ルカは笑った。
いつもの優しい、太陽のような笑顔。
その笑顔を、私は好きになったのだと思う。

発車まで、あと1分。

「……またね、ルカ」
「ああ……また」
「さよなら」は言わないよ。
また会えるから。

「じゃあな、ルカ!!」
「浮気するなよー!!」
「綾乃泣かせたら殺す!!」
「またねー!!」

発車まで、あと30秒ーー


「……ルカ!!!!!」

発車まで、あと10秒ーー



「……大好き……!!」




言い終わった後、タイミングを計ったように新幹線が発車した。

ルカは、遠くに離れて行った。

「……ルカ……!!」

力が抜けて、座り込む。
左手の薬指には、華奢でシンプルな翡翠の指輪。
その指輪に、私の涙が落ちる。
「……元気出せよ」
隼人くんの華奢で軽くひねれば折れてしまいそうな手が、私の頭をゆっくりと撫でた。
「居たんだ」
私は静かに立ち上がる。
「お前の無様な泣き顔を見に来た」
「ちょっと!! 女の子相手にそれは無いんじゃない!?」
麻里乃ちゃんが吠える。
「こいつが女? 笑わせんな」
「……」
私は無言で彼の腹にパンチを一発。うずくまったけど知らないよ。私は何も。
「人が大人しくしてれば何? ふざけんな」
私は、微笑んだ。
「でも、おかげで元気出た。ありがと」
笑った。筈なのにーー

「自分を偽るの、やめたら? 泣いてるくせに」

「何言ってるの? 私はちゃんと笑ってる」
頬に手を当てる。生温い水が触れた。
「私、泣いてたんだ……」
どうして?
もう 泣かないと誓った筈なのに。
「あの男がいない時は、泣いても良いんじゃない?」
隼人くんの言葉に、涙が零れた。
散々泣いたのに。
もう、涙は枯れた筈なのに。
「……ルカ……」
会いたいよ。
さっき別れたばかりなのに、会いたいよ。
「……ルカぁぁぁぁぁ……」
一人でも平気だなんて嘘。本当は全然平気じゃない。
「携帯鳴ってるぞ」
「……あ、ルカからだ……」
ルカからの電話。
「もしもしっ!?」
『綾乃? 泣いてるのか?』
「ベ……別に泣いてなんか……!!」
必死に強がる。
ルカに心配されないように。
『嘘だな』
「はい、嘘です。サーセンした」
『やっぱり綾乃は嘘が下手だな』
ルカは笑った。
『いま、どこにいる?』
「……さっきと変わらずー」
『……俺、中学卒業したら帰れるかも』
「え、マジ!?」
思わず、皆にも聞こえるようにする。
『ああ、優香さんがやっと折れた。中学卒業したら帰れるんだ!!』
ルカは本当に嬉しそうだった。
「良かった……」
『だから、あと4年待ってて』
「うん、待ってる!!」
さて、家帰ったら勉強しよう。
ルカと同じ高校入るんだ。
『それだけ。じゃあな。東京着いたらまた連絡する』
「うん、じゃあね」
電話を切った途端、微笑んだ。
「あと4年待ったら、また一緒にいられるんだ!!」
「良かったね、綾乃!!」
昴お姉ちゃんが、抱きしめてくれた。
「うん……!!!」
「さて、飯食いにいくか!!」
清羅お兄ちゃんが、皆に笑いかける。
「おー!!」
全く、ノリの良い奴らだ。
私は微笑んだ。


「……雪乃。学級崩壊、終わったんだよ……!! もう、復讐はしないよ!!」

空に向かって、呼びかける。

「宮本ねー、クビになったんだって!! 学級崩壊はもう、終わったんだよー!!」

そう。
週明け、学校に行ったら宮本の姿は無かった。
代わりに、教頭が居た。

「宮本ね、田舎に帰ったんだって!! ざまぁみろ!! ってかんじだよねー!!」

「だから、安心してくださいねー!!」

おい、涼月財閥の御令嬢。そんなはしたないことして良いの?

「雪乃ー!! 大好きだー!!」

清羅お兄ちゃんまで。両思いだったのか。

「雪乃ー!!!! 清羅には気をつけろよー!!」
「なんだよ昴。人をオオカミみたいに」
「その通りだろうが馬鹿野郎」
言い合う二人は、幸せそうで。
思わず、顔がほころんだ。



「雪乃、大好きだよー!!」

ありったけの大声で、雪乃へ伝えた。



ねぇ、雪乃?

もう、『学級崩壊』は終わったんだよ。

もう、復讐しなくても良いんだよ。

私は今、幸せだよ。

雪乃のおかげで、幸せになれたんだよ。


雪乃。ありがとう。




大好きだよ。





学級崩壊・第一部 〜fin〜