大人オリジナル小説

Re: 学級崩壊【第一部完結!!】 ( No.284 )
日時: 2013/09/02 07:20
名前: 藍里四季

5話 友達

綾乃が倒れた後、俺は気が狂いそうだった。
俺は綾乃が憎かった。綾乃を刺した。
「……どうして!!」
どうしてなんだ。
「なんでお前は俺を憎んでくれないんだ!? あの時もーー」
俺の父が綾乃の家族を奪ったあの時もーー
「なんでお前は俺を恨まないんだよ!!!」
俺は綾乃を揺さぶる。
「答えろよ!! 綾乃!!!!」
ぎゅっと、俺の血まみれの手と綾乃の綺麗な手が重なる。

「だって……『友達』でしょう……?」

綾乃は微笑んだ。

「ずっと……考えてた……私がしたことは……ただしかったのかって……奈々を泣かせたことは、正しかったのかって……そして、答えが出た……」
綾乃は苦しそうに腹の傷を抑える。




「……間違っていた、と……」





綾乃の瞳から、一筋の涙が流れる。

「宮本は雪乃を殺した……でも、それは雪乃が選んだ道だ……私が復讐していいことじゃない……」

なのに、と綾乃は続ける。

「……私は誤った道を選んだ。……ごめんなさい、奈々……父親を奪って、ごめんなさい……」

父親の居ない苦しみは分かっているのに。と、綾乃は哀しそうに顔を歪めた。
こいつは、誰よりも強い。そして優しい。
自分が傷ついても、周りの人間を助けようとする。
「……綾乃……」
「……ごめ……なな……」
掠れた声しか出ないな、と言うように、綾乃は微笑んだ。
「きゅ……救急車!!」
「もうすぐ着く。だから寝るな、綾乃!!」
荒川は、必死に綾乃を抱きしめる。
「……ルカ……ごめんね……ありがとう……」
「何も言うな!! もう、分かったから……!!」
「私ね……ルカが大好きだった……」
荒川の言葉を無視して、綾乃は続ける。
「いじめられても……大好きだったんだ……」
「……綾乃……」
「覚えてる……? 私達、過去に一度会ったことがあるんだよ……」
ほら、あの夏の日。と綾乃は微笑んだ。
「分からない。わかんねぇよ!!」
「ごめん……もう眠くなってきちゃった……目が覚めたら思い出すはずだよ……」
「綾乃!!」
「……ごめんね……」



綾乃は、ゆっくりと目を閉じた。
その瞬間、救急隊が到着する。
目を瞑る暇も無く、綾乃は運ばれて行った。



神様、頼むよ。
綾乃を……綾乃の命を、助けてくれ。
綾乃を殺そうとしたのは俺だ。
俺はなんでもするから……頼む……


綾乃を、連れていかないでくれ。