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8話　姉さん

「綾乃」
聞き慣れた、大好きな声がして後ろを向く。
そこには、私達ーー私、雪乃、奏のお姉さん的存在の花風昴(ﾊﾅｶｾﾞｽﾊﾞﾙ)さんが居た。
「昴お姉ちゃん！」
「え、昴お姉ちゃんですか!?」
私と奏は、昴お姉ちゃんに駆け寄る。
「やってるねぇ。アタシもまぜて貰おうかな」
「うん、きてきて！」
「花風……か？」
宮本篤司に名前を呼ばれた途端、昴お姉ちゃんの態度が変わった。

「おいテメェ、雪乃を殺した癖にヘラヘラしてんじゃネェよ。テメェの口でアタシの名前呼ぶな!!」

説明しよう。
昴お姉ちゃんは、私達をーー雪乃を、実の妹のように可愛がってくれてたから……だからよけいに、宮本が憎いんだと思う。
「昴お姉ちゃん、落ち着いてください」
「そうだよお姉ちゃん。言葉より暴力の方が楽しいよ？」
「綾乃。それは何か違います」
「気のせいだよ、奏」
私は奏に向かって微笑み、宮本の腹を蹴る。
「死ねよ、クズが。雪乃を殺したこと、まだ反省してないみたいね」
「あいつが勝手に死んだんだ！　俺は悪くないだろう!?」
「悪いんだよ！　お前がストーカーなんかしなきゃ、雪乃は生きてた！　今も、笑っていられたはずだ！」
昴お姉ちゃんが、宮本を殴る。
「人殺し！」
宮本は、その言葉を聞いても平然としていた。
「……ねぇ、昴お姉ちゃん」
「何？」
彼女は、涙がたまった瞳で私を見つめる。

「雪乃の代わりに、こいつが死んだら良かったのに」

私の声は、ゾッとするほど冷たかっただろう。