大人オリジナル小説
- Re: 学級崩壊【参照1700突破!】 ( No.322 )
- 日時: 2013/09/16 09:56
- 名前: 藍里四季
11話 過去
二段飛ばしで屋上へと続く階段を駆け上がる。
「……綾乃……!!」
頼む、何も知らないでいてくれ……!!
そんな俺の願いも虚しく、綾乃は泣いていた。
神崎の写真を抱きしめ、1人で。
「……あ……」
その光景を、どこかで見たことがあると思った。
「……あの時の……!!」
「……やっと、思い出したんだ……」
涙に濡れた瞳で、彼女は俺を見た。
「……私のお姉ちゃんね、自殺したの」
この学校の屋上から飛び降りてね、と綾乃は続けた。
「私がこの学校に転校してくる前にも、私はこの学校に居たの。まだ元気だった両親の仕事の都合で、雪乃が死んだ土地に行くことになっちゃったけど……」
俺は思わず、綾乃を抱きしめる。
もう、どこにも行ってしまわないように。
「お姉ちゃんが自殺した理由はね、イジメだった。ある日、屋上に呼び出されたお姉ちゃんは、私の目の前で……」
綾乃は、手で顔を覆う。
「主犯格に、突き落とされた……!!」
唇を噛みしめる綾乃。
「……主犯格の名前は、『荒川優子』。ルカ。貴方の従姉妹よ」
「……従姉妹って同じ苗字じゃないんじゃ……」
「結婚して、苗字が変わったらしい。前は、伊藤優子」
淡々と語る綾乃の姿に、胸が潰れそうなほど痛む。
「……優子姉さんが……どうして……」
「理由は簡単。勉強で勝てないからだって。琴乃お姉ちゃんは誰よりも努力していた!! それなのに……あの女は……!!」
「……琴乃……? 綾乃のお姉さん、琴乃っていうのか!?」
俺は、綾乃の肩を掴む。
「……うん。佐々木 琴乃よ」
「……前、優子姉さんが言ってた。昔いじめてた奴が死んだって」
俺は、綾乃に頭を下げた。
「……ごめん!! 俺のいとこが……!!」
「……ルカ、いいよ。ルカは悪くないでしょう?」
俺に背を向けて、彼女は静かに泣いた。
声を押し殺しているけど、肩が震えている。
「……ねぇ、ルカ……」
綾乃は、涙声で言った。
「……どうして私の周りでは、人が死ぬの……?」
俺は何も答えず、彼女を抱きしめた。
答えの代わりに、こう言った。
「大丈夫。俺は死なないから」
綾乃は、小さく頷いた。