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１２話　主犯格

「へぇ、この子が琴乃の妹かー」
どこかで聞いた声。
「……荒川優子……!!」
長い髪を金髪に染めた女性が、私の前に立っていた。
「お久しぶり。佐々木綾乃さん。大きくなったわね」
「お久しぶりです。荒川優子さん。姉を殺した貴方が今ものうのうと生きているとは……驚きですわ」
私は微笑む。
「てっきりまた人を殺めて刑務所の中かと思っていました」
「私はもう１９歳。そんなことするわけないでしょう」
「あら、私の姉を殺した時のようにもみ消してもらうとばかり思っていましたわ」
もう、私は笑えない。
涙が一筋、頬を伝った。
「どうして、琴乃お姉ちゃんはこんなやつに殺されたの……？」
「この世界は弱肉強食」
弱いやつは死ぬ運命なのさ、と彼女はつぶやいた。
「……琴乃お姉ちゃんは……弱くない……!!」
誰よりも強く、優しかった。
「あはははは!!!　弱いから死んだんだろう!?」
ﾌﾟﾁﾝ、と、何かが切れる音がした。
「ふざけんな!!」
私が彼女を殴ろうとした瞬間、彼女は倒れていた。
「俺の彼女の姉を侮辱するな。これ以上口を開くと縁を切るぞ
荒川財閥次期社長がな」
荒川優子は唇をかむと、悔しそうに屋上から出て行った。
ルカ、怖い。

「……琴乃お姉ちゃん……奈々……」
この屋上でなくなった人たちの名を呟くと、それに答える様に風が吹いた。