大人オリジナル小説

Re: 学級崩壊【オリキャラ募集中!&2000突破!!】 ( No.428 )
日時: 2013/11/02 21:14
名前: 藍里 ◆wcVYJeVNy.

最終話 デートと友情

「陽、お待たせ」
「綾乃先輩……」
陽は何故か、私を見て顔を赤らめている。
「きょ、今日の格好可笑しかった!?」
「そんなことないです!! ただ……」
「ただ?」
陽は俯き、消え入りそうな声で言った。

「すごく、可愛いので……」

ぼん、と顔に火でも付いたように赤くなる。
「あ、あああありがとっ!! え、映画館行こうっ!!」
盛大に噛んだ。恥ずかしい。
「そうですね!!」
陽は微笑み、私を庇うように立つ。
「転ばないようにしてくださいよ。危ないんですから」
「大丈夫だよ。陽は心配性だな」
私は微笑んだ。
「仕方ないじゃないですか。心配なんですから」
陽の言葉に、また顔が赤くなる。
「初々しい……」
私たちを見ていた綺麗なお姉さんが呟いた。
その隣にいるお兄さんも頷く。
「い、いっておくけど……デートじゃないからね!! 陽が勝ったからお祝いするだけだから!!」
「分かってますよ、綾乃先輩」
陽は笑った。
「行きましょう、綾乃先輩」
「そうだね」
私は微笑み、陽の隣を歩いた。

何故か、とてもドキドキして。
練習中にもっと近づくこともあるのに、ドキドキして。
デートじゃないのに、意識して。
「きゃっ……!!」
ドン、と誰かにぶつかる。
「ごめんなさーーえ、雷ちゃん!?」
「佐々木先輩……もしかして、デートですか?」
「デートじゃないよ!! 陽が勝ったからお祝いするだけだから!!」
「なにムキになってるんですか?」
雷ちゃんはニヤニヤと笑う。
「俺、これからデートなんで。じゃ!!」
「彼女傷つけんなよー!! 浮気者ー!!」
私は微笑み、陽のところへ行った。
「また誰かにぶつかるといけないので」
陽は私に、手を差し出す。
ーールカ、ごめん。
私は、その手を握った。
初めて握る、陽の手は、私の手よりも震えていた。
前を歩く陽を盗み見る。
陽は、耳まで真っ赤だった。

「学生二枚」
陽が、チケットを買う。
「いくら? 払う!!」
「だめです。こういう時は男が払うんです」
「でも、陽のお祝いで……!!」
「今日だけは、彼氏気分味合わせてくださいよ。それが俺へのご褒美です」
「……後でお茶でも奢らせて」
「はい」
お茶だけじゃなく、他にも奢ってやる。



「……ぐすっ……」
ぽろぽろと、頬を伝って流れる涙。
「泣きすぎですよ、綾乃先輩」
「だって……あんな脚本で泣くなというほうが無理だよー……」
映画は、とても面白かった。
いじめで笑顔を無くした少女と、笑うことで自分を隠す少年。
2人は少しずつ、互いに心を開いて行く。
そして最後に、一度も笑わなかった少女が笑う。
「ありがとう」
と。
そして、一度も泣かなかった少年が泣く。
「ごめんな」
と。
そして2人は、もう二度と会うことはなかった。
少女が、自殺したからだ。
いじめによって精神を病んでいた少女が、発作的に自殺をしてしまったのだ。
遺書には、こう書いてあった。
「あたしが笑えたのは、全ては君に逢えたから」
と。

「……顔洗ってくる……」
陽にそう告げ、歩き出した。

「うわ、酷い顔」
目は充血していて、鼻は真っ赤。
こんな化け物みたいな顔を陽に見せていたのか。恥ずかしい……
ばしゃばしゃと顔を洗った。

「陽。プリクラ撮りに行こう。記念記念!!」
「そうですね」
また、手を繋いだ。
別に、嫌じゃなかった。

「はい、陽の分」
陽の分を、彼に渡す。
「ありがとうございます」
陽と撮ったプリクラは、何故かとても輝いて見えた。


「陽。行きたい場所があるんだ」
カフェでココアを飲みながら、陽に言った。
「どこですか?」
「来ればわかるよ」
カフェを出て、人ごみを抜けて、町外れの海に出る。
海が夕焼けを映し出していて、とても綺麗だった。
「綺麗ですね……」
「これだけじゃ、誕生日プレゼントにならないかもしれないけどね」
私は微笑んだ。
「ハッピーバースデー、陽」
私が言うと、一斉にクラッカーが鳴らされた。
柔道部の皆、私の友人たち。
たくさんの人達が、陽を囲む。
ルカは居ないけど、陽におめでとうと言っておいてくれと。
「……すごい偶然。琴乃お姉ちゃんと同じ誕生日なんて」
雰囲気も、どことなく似ていたし。

「……お誕生日おめでとう。琴乃お姉ちゃん。陽」

私はきっと、この日のことを忘れないだろう。

「綾乃ちゃーん、早くきてー!!」

麻里乃ちゃんを筆頭とした、大切な人たちと大騒ぎした日を。

「今行くー!!」

たとえ、どんなに時が経っても。
たとえ、どんなことが起ころうとも。
ずっと、ずっと、忘れないと思う。

「はい、チーズ!!」

『綾乃。ありがとう』

久しぶりに琴乃お姉ちゃんの姿を見たことも、忘れないと思う。

「……私、幸せだよ」

私は微笑むと、砂浜に寝転がり、星を眺めた。



~fin~