大人オリジナル小説
- Re: 学級崩壊【オリキャラ募集中!】 ( No.50 )
- 日時: 2013/04/30 16:45
- 名前: 哀歌 ◆dcuKuYSfmk
16話 気持ち
「ルカ!?」
「おい、ルカ!!」
「荒川?」
隣の部屋からバタリと何かが倒れる音がして、ルカを呼ぶ野太い声が聞こえる。
「ルカ!?」
和室のドアを蹴ろうとした足を止め、ドアを開ける。
「……ルカ? ねぇ、ルカ!? ちょっ……!! 何悪ふざけしてんの!? さっさと目を開けーー」
「綾乃。好き」
「ああ、ただの風邪ね。外に放り出しておけば治るでしょう」
「お前鬼か!」
渡辺剣のツッコミが入る。
「冗談よ。誰か手伝って。ルカを私の部屋に運ぶ。会議は進めておいて。私はルカの看病をする」
「放っておいても大丈夫だって! 佐々木は復讐のリーダーなんだから」
渡辺剣は、私の肩を掴んだ。私はそれを振り払う。
「一人は寂しいもの。私は、ルカの傍に居たい。……昴お姉ちゃん。進めといて。逆らう人は追い出して」
「分かった。行ってらっしゃい」
「ありがとう。お願いします。清羅お兄ちゃん。ルカを運ぶの手伝って」
「了解!」
清羅お兄ちゃんは軽々とルカを持ち上げる。
「私の部屋に運んで」
「分かった」
ちなみに、私の家に客間はありません。
「よいしょっと」
「ありがとう」
ルカを清羅お兄ちゃんは、優しく私のベッドに寝かせ、布団を掛けた。
ああ、清羅お兄ちゃんの紹介がまだだったよね。
ーー秋霞清羅(アキカスミキヨラ)
興味のない人には関心を持たない。しかも、記憶から瞬時に消える。
とてもはっきりとした性格の人だ。
今、高校1年生で、県内の進学校に首席で入学した。
どうして私の周りの人は、頭の良い人が多いのだろうか。
「綾乃」
「なぁに?」
「こいつーールカのこと、好きなのか?」
清羅お兄ちゃんが、真顔で爆弾発言をかます。
「……分からないよ、そんなこと」
私は、なぜか落ち着いていた。
「ルカは私を虐めた。だけど、すごく優しい人。ルカと一緒にいると落ち着くし、楽しいけどーーそれが「好き」だとは限らない。もっと別な感情かもしれない。よって、分からない」
「……そうか」
清羅お兄ちゃんは、部屋を出て行った。
その哀しそうな表情が、頭から離れなかった。
「ひえぴたと水取ってこよう」
あと、薬も。
私も部屋を出た。
「薬に水、ひえぴた、体温計……擦り林檎くらいなら食べられるよね」
キッチンで必要な物を調達し、部屋に戻る。
ドアの前に立つと、部屋の中から話し声がした。
「私、まだ好きなんだけど」
「で? ここ綾乃の部屋なんだけど。出てけ」
「嫌!」
「出てけ!」
「ーールカ? 誰か居るのーー胡桃ちゃん?」
「今戻りました」みたいな顔で、自分の部屋に入る。
そこには、胡桃ちゃんが居た。
「風邪、移るよ? 早く下に戻りなよ」
「私が看てるから。綾乃ちゃんは戻って?」
ああ、こいつ……ルカのこと好きなんだ。
「ごめん。他人に自分の部屋で我が物顔されたくないんだぁ。ごめんねぇ? さ、出てった出てった!」
彼女の耳元で、「勝手に部屋、入らないでくれる?」と囁く。
軽く突き飛ばし、ドアを閉めた。
「ルカ。熱計ろ」
彼に、体温計を渡す。
「ああ」
「汗かいたよね。タオル持ってくる」
部屋を出た。
「タオルタオル……3枚くらい持って行くか。冷えピタの換えも必要だよね。それから、喉乾くから水……」
できるだけ傍を離れたくなくて、一度に多めに持って行く。
「綾乃ちゃん」
胡桃ちゃんに名前を呼ばれた。
「私、ルカのこと好きなの」
「うん、知ってる。用はそれだけ? じゃあね」
私は、彼女に背を向けた。
「ルカー、持って来たよ」
「ああ、サンキュ」
ルカにタオルを渡した。
「はい、水」
「ありがとう」
水を渡したら、ルカはすぐに飲んだ。
「さ、寝て。熱は?」
「39.5」
「はぁ!? お前、その熱で……!!」
「綾乃?」
「心配するだろ……早く寝ろ!!」
私はルカに布団を被せた。
「さっさと寝ろ。馬鹿」
ルカ頬は、熱のせいか赤く火照っていた。
仕方ない。手を握るだけなら許してあげよう。