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第二話『作り物は天然物にはなれない。ゆえに、嫉妬する』



-　愛香視点　-

「愛香ってさぁ、ほんと可愛いよねぇ！」

あたりまえじゃない、そんなこと。

「そんなことないよぉ！　私なんか可愛くないって！」
「でも、愛香はいろんな人に好かれてるよ？　天然で可愛いからって」

そりゃ、私は天然作ってますから。

「やだぁ、私そんなんじゃないって！」

とりあえず、笑いながら誤魔化してみる。
この性格が作り物だと知れたら、幻滅されてしまう。素の自分を見せると、相手に嫌われる。
だから、私は自分の素を出さない。
可愛い可愛い私を演じてる。
天然で、ふわふわした女の子。男の子なら、誰もが夢中になり、女の子なら、誰もが羨み、一緒に話したくなる女の子。
私は、そうなれるよう、いつも演技を欠かさない。

――のに、だ。

「でも……。あ、ジョジョ！　ジョジョはどう思う？　愛香って可愛いよね？」

突然話題を振られると、私の視線の先にいる金髪の少女は、肩を震わせながらも頷いた。
いかにも驚いていると言った顔だが、その顔もまた愛らしく、普通に笑えば、誰もが見とれてしまうと思えるほどに、綺麗な容姿。
まるで、人形のようだけれど、ちゃんと人間のような温かみをもった、完璧な美しさ。

「だよね！　……でも、愛香も可愛いけど、ジョジョも可愛いよねー。素直で純粋で、でも時々大人で……」
「ええと、ありがと。……でも、そんな風に褒めないでよ。僕、褒められるのには慣れてないから」

彼女がそう言って顔をそむけると、さっきまで私に夢中だった女の子は、頬を緩ませながら、金髪の少女の頭を撫でる。


――なんで、この子は、私より愛されているの。

憎い。
私より愛される、ジョジョという女の子が。
憎い。
歳の割に大人びた性格をしているとこも、すかしてるみたいでムカつく。
憎い。
この学校で一番かわいいのは、私だけでいいのに。

私だけで、いいのに。
なんで、ジョジョはここにいるの？
なんで、みんなはジョジョの方ばっかり見るの？
ムカつく、ムカつく、ムカつく！　あんな子、面白くもないし、たいして凄くもないのに！






……あ、そうだ。
そういえば、この学校、虐めで不登校になった子がいるんだったっけ。



不登校。
その言葉が、頭の中でぐるぐる回る。

そうだ。
ジョジョが、虐めで不登校になっちゃえば、みんなは私を見てくれるよね。
学校に来ないジョジョなんて見ないで、私の方に目を向けてくれるよね。

可愛い可愛い、私だけを、見てくれるよね――。