大人オリジナル小説

Re: 思い出せば。 ( No.2 )
日時: 2013/09/14 22:18
名前: 翅

第一章 「赤坂 優実」

――あなたのクラスに虐めはありますか?

ありません。
とても仲のいいクラスです。

調査のまとめはこんな感じだった。
なんで、こんなウソを堂々と書けるのだろう。

あたしもだけどね。

「全くだよな。怖いわ。俺、このクラス一番怖い。」

あたしの目の前にいる伊藤流斗が言った。

「っていうか、あたしこの後塾あるんだよね。」

「俺も。」

今、あたしたちは学級委員の仕事をしている。
あたしは、学級委員でも室長でもない。

流斗もそうだ。

「なんであたしたちこんなことしてるんだろうね。」

「そりゃあ、由梨の命令ですからね。」

斎藤由梨。
このクラスの室長であり、学級委員。

このクラスのリーダー…。

「これ後一時間以上かかるよね。」

「やばい、俺あと15分で塾だわ。」

「あたし、やっとこうか?」

「いいよ、悪いし。裏切れないしな…。」

口元が緩む。
ホントにこの人の隣にいると落ち着く。

ピリリリリリリリ

ふいに二人の携帯が同時になった。

「…最近LINEを見るのが憂鬱になってきた。」

「俺もだよ、以心伝心?」

「んなわけないわ!」

スマホを開くとそこには由梨からLINEメッセージ。

『今から、ぃきっけのカラォケしゅぅごぅ(●^o^●)』

今、仕事中なんですが…。

でも、由梨の命令は絶対だから…。

「流斗どうする…?」

「塾休むしかないだろ。」

「違うよ、この大量の仕事。」

「おうちにお持ち帰り!!」

「そうなるか…。」

そうときまると二人ともそそくさとカラオケ準備。
塾は、休ませてもらう。悪いけど。

由梨に逆らうとどうなることか。
来ない人はいないだろう。

っていうか、来ない人は明日から…。

恐怖の時間が始まってしまうからね。

「あたしさ、由梨から逃げてるよね。」

カラオケに行く途中あたしはつぶやいた。

「お前だけじゃないよ。クラスみんな。全員。由梨を恐れて逃げてる。」

流斗が、夕日に照らされていて。
あたしは流斗の後ろにいるから、シルエットになっている。

流斗の背中は少しさびしそうで。

「俺、みんなと仲良くしていたいな。」

そんな言葉をつぶやいた。
あたしは言葉がでなくて。

結局しゃべるのをやめた。

____________________

「はい、斎藤の連れです…追加お願いします。」

流斗と受付を抜けて、指定された部屋に向かう。

暗い気持ち。

今、どんな気持ち?って聞かれたらこう答える。
でもドアの前にたつと、無理にでも笑顔をつくる。

「流斗笑顔OK?」

「おけ。」

ガチャ

「おおおおおおおおおっっ!!優実と流斗登場ーっっ!!」

「もうみんな集まってるよ〜!後一人だよ。危なかったねセーフ。」

あたしの一番の友達、有川美優がささやく。
セーフとは何のことか。

見ていればわかること。

ガチャ

ドアの音がした途端、部屋に色が飛び散った。

「おっそいよ〜?朱里ちゃん?」

何がおこったか。

みんながいっせいに山本朱里にジュースをかけたのだ。
理由は、いじめられっ子という理由ではない。

うざいという理由でもない。

ただ___。

カラオケに集合するのが一番最後だったという理由だ。

「みんな集まってるんだけど?みんな待ってたしねぇ?謝ってね?っていうか、何その派手な服。目立ちたいわけ?」

由梨は、遅れてもない朱里を責め続ける。
この時間は、一番嫌いで一番憂鬱で、一番裏切った気分になる。

まだまだ、責め時間は終わらない。

今からだ。

最悪な時間なのは__________。